日本最大の繁華街・歌舞伎町のヤクザは、東京都の暴力団排除条例で多くの仕事を失った。彼らは今、どうやって生活しているのか。ヤクザの代わりに働くパートナーの女性に、ノンフィクションライターの中村淳彦さんが聞いた――。

※本稿は、中村淳彦『歌舞伎町と貧困女子』(宝島社)の一部を再編集したものです。

グラスや酒瓶が並ぶバーのカウンター
写真=iStock.com/Nikada
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街中の監視カメラがヤクザの仕事を奪った

2011年10月に東京都で暴排条例が施行され、徹底的に市民と警察が一致団結して「暴力団追放」となった。

最強と呼ばれていた歌舞伎町のヤクザたちも仕事を失った。みかじめ料を支払う店は激減。街娼たちもヤクザに1円も支払っていない。薬物売買も思うようにはできなくなり、恐喝をすればすぐに警察が飛んで来る。ヤクザは八方塞り、がんじがらめになっていた。ヤクザ専門スナックのママはこう話す。

「本当にすぐに逮捕されちゃう。いまヤクザはおとなしくなっちゃったけど、昭和の頃の歌舞伎町は本当に怖かったというのは聞くよね。おとなしくなっちゃった一番の原因は監視カメラ。石原都知事になって監視カメラがついて犯罪をできなくなった。何もできないって、みんな言ってる。カメラがない頃はなんでもありだったけど、歌舞伎町はとくにカメラが多すぎて犯罪がやりづらい街になっちゃった」

つい2年前まで歌舞伎町の唯一の犯罪スポットだった場所は、風林会館前の道路を渡った先にある歩幅1メートル程度しかない狭い路地だ。まったく日の当たらない劣悪な立地だが、この路地では数店の中華料理店が営業している。その路地が唯一のカメラ未設置場所で薬物売買などの犯罪が横行していた。

いちばん多いのは「女に食わせてもらっている」

「その路地だけ私道でカメラがなかった。そこで薬の受け渡しとかをしていたみたい。でも、あまりに犯罪が多いから2年前に町内会がカメラをつけちゃった。それで歌舞伎町内で犯罪できる場所がなくなった。もう、街で何もできないってみんな嘆いているよね」

仕事を失ったヤクザは、どうしているのだろうか。ママに聞いてみる。

「本業の露天商はやっているけど、それ以外だと、たぶんいちばん多いのはヒモ。女に食わせてもらっている。あとは日雇いの建築現場で働いている。昔は恥ずかしがっていたけど、土方やるのは本当にいま普通。あと解体業とか」

トー横キッズ、地下アイドル、ホス狂い、街娼に続いて、ヤクザからも「(女からの)貢ぎ」的な話が出てくる。収入がないので反社ではない女に稼いでもらうか、犯罪ではない堅気の仕事をするしかなくなっている。

そして、ヤクザと半グレの違いは組織に上納金を払っているか、払っていないか。このスナックに来るヤクザたちは組織に上納金を払う本物のヤクザだが、その内容は建築現場の日当から支払っている、もしくはヒモとして女からお金をもらって払っているという。あまりに厳しい実態があった。