母子家庭、母親からの虐待を受けて育った
旦那とは正式に結婚はしていないようだ。戸籍上はシングルマザーなので児童扶養手当をもらいながら、いくつかの仕事をしている。
歌舞伎町にある家の家賃は月10万円。ずっと家賃を滞納するレベルのギリギリの生活が続いているという。ヤクザは犯罪が仕事だ。彼女が言う「なんの期待もしていない」とは、貧乏なりに幸せな家庭があるなかで、旦那が仕事を頑張って逮捕されても困る、という意味だった。歌舞伎町でヤクザと家庭を築き、3年前に子どもを産むまでは波乱万丈だったようだ。
店内のヤクザ客はだんだんと盛り上がっている。駄洒落やものまね、爆笑が渦巻くなか、名越宏美にいったい何があったのか聞いていく。
「地方でホストに風俗に堕とされたり、実の父親にセクキャバで働かさせられたり、いろいろ。まず、地元の群馬でお母さんからの暴力があった。ウチは母子家庭で私が長女で、弟、妹がいた。お母さんは私にはすごく厳しかった。殴る蹴るとか、裸にさせられるとか、包丁で脅されるとか、そういう悲惨な虐待を受けていた」
両親は父親の家庭内暴力が原因で離婚している。離婚後、母親はホステスになって夜はいなかった。住まいは県営団地。母子家庭で育って、県営団地の片隅でひたすら母親からの虐待を受けてきたようだ。
口に画鋲を入れられても「お前が全部悪い」
「お母さんは離婚からおかしくなって、母子家庭になってから変わった。私、中学のときにすごくイジメられていたの。イジメは本当にすごくて悲惨。口の中に画鋲を入れられたりした。でも、お母さんはお前が全部悪いって。
家に帰ると、お母さんに毎日あざができるくらい殴られた。私、勉強が嫌いだった。点数が悪いとひたすら殴られる。だから年齢ごまかして中学から働いた。ガソリンスタンドとか牛角とか。でもお金は家に入れろってお母さんにほとんど盗られた」
中学2年から学校のイジメと母親からの虐待に耐えられなくなり、家出を繰り返すようになった。家出先は助けてくれる男の同級生の部屋。男はさっそく肉体関係を求めてきた。応じないと行き先がなかった。初めての経験だった。それから繰り返し男の欲望の的になった。
「家出しちゃっているから、自分の居場所がどこにもない。だからヤルくらい我慢しないと生きていけない。その男のことは全然好きじゃないけど、仕方なかった。彼氏もいなかったし、つくろうとも思ってなかったけど、好きな人はいた。でも、その好きな人にイジメられてるから救いがなかった。群馬では本当にいいこと、何もなかった」