※本稿は、川邉サチコ『87歳。“私基準”で生きる』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
「山口小夜子」という究極の共同作品
私が最初にメイクを本格的に学んだのは、パリでした。外国人の顔は目鼻立ちがはっきりしていて、凹凸がしっかりとあって、特に立体的でした。少し手を入れるだけできれいに仕上がり、「この仕事ってものすごくラクかも?」と勘違いしたほど。日本人の顔はやはり平面的で、帰国して苦労したことを覚えています。
モデルという職業に就いた選ばれしプロたちは骨格が違います。撮影モデルと呼ばれる人は、顔の造作がきれいで、アップにしたときに映える、魅力的な目鼻立ちをしています。一方、コレクションなどで活躍するショーモデルは、体全体の骨格バランスが飛び抜けて美しいのが特徴。これは後天的に手に入るものではありません。
骨格の美しさという共通項はあっても、モデルの国籍はそれぞれ。世界各国の美と個性とを肌で感じていた私が、日本の美を武器に勝負したいと考え、モデルと一心同体となって魅力をつくり上げたことがあります。
それが「東洋の神秘」と称された、スーパーモデルの山口小夜子さんです。
直線的なボブカットが印象的な漆黒のストレートヘア、抜けるように白い、陶器のようなマット肌、スッと伸びた切れ長のアイメイク、くっきりとリップラインを縁取った真紅の唇……。その伝説は今なお語り継がれています。生涯を振り返っても最高峰の仕事であり、公私ともに親しくしていた小夜子さんとの究極の共同作品だったと思っています。


