売れること以上に、文化を根付かせたい
「どうしてヒットしたのか? さあ、いろいろやりましたけれど、タイ馬鹿と言われたくらい、のめりこんだからでしょうか。
私はタイカレーのヤマモリと言われるようになって、うれしかったけれど、同時にまだダメだと感じた。俺たちはタイカレーのヤマモリだけじゃダメなんだ。タイフードのヤマモリにならなきゃダメと。
これからは基本調味料をやる。ナンプラーだ。現地の味そのもののナンプラーを作らなきゃいかん。在庫がくるくる回る商品じゃないから儲からないかもしれない。しかし、日本で売っている既存のナンプラーはタイのそれとはまったく違う。
タイ人が食べたら怒るようなものではいけない。タイに申し訳ないし、タイフードのイメージが悪くなる。
私は現地の味そのもののおいしいナンプラーを作って売り出しました。スイートチリソースも始めました。ココナッツミルクも重要。調味料はタイ料理の基本のキみたいなもんですからね。歯を食いしばってでも、われわれがやっていかないと……」
三林の話は終わらない。
彼はヒット商品を作ろうというより、日本にタイフードを根付かせようとしている。
太陽光を凸レンズで集めると瞬時に紙を燃えあがらせることができる。同じように三林は自身の情熱をひとつに集めた、そうしてタイカレーを日本人に広めていった。
ヒット商品を作るにはマーケティング、経営施策、開発陣が必要だ。だが、炎のような情熱がなければ広まることはない。