秋ごろから起こる季節性のメンタル不調はどのように対処すればよいのか。外資系企業で産業医を務める武神健之さんは「毎年この時期に産業医面談に来る人がいます。季節性のメンタル不調を改善するにはセロトニンやオキシトシンを増加させることが必要です」という――。

秋になると心身の不調を訴える社員たち

実は私の医師としてのキャリアは外科医からでした。外科専門医の資格も取得しましたが、大学院在学中に産業医という仕事に出会い、かれこれもう10年以上、産業医をしています。そのため10年以上続くクライアントもおり、時々しか面談に来ないけれど、もう10年近く知っている社員さんたちもいます。

そのような中で、(ほぼ)毎年、秋になると心身の調子を崩しかけて面談に来る社員について、今日はお話しさせていただきます。

夜寝ても日中も眠い…やる気が出ない男性社員のAさん

男性社員Aさんは、彼がまだ30代の頃からほぼ毎年秋に数回面談にやってきます。そして現在、彼は40代後半です。面談している間にお子様も高校生になり、彼との面談で、私は自分の産業医としての職務の長さを実感しています。

起きられない男性
写真=iStock.com/Kate Aedon
※写真はイメージです

Aさんにとって秋は、どうも気分が優れない、ひどい落ち込みではないが、仕事や週末のテニスにやる気が出ない時期のようです。秋は涼しくなって眠りやすいが、なぜか日中も眠くて元気が湧いてこない、食欲は変わらない(ある)ので、体は問題ないと思うとのこと。普段から医者には行かない、薬は飲まないことをモットーにしているので、睡眠薬などは飲みたくないけれど、どうにかしたいと産業医面談に初めてきたのは10年以上前でした。この前の年、秋のこの不調を放置したら冬になり調子がもっと悪くなったため、どうにかしないとと思ったとのことでした。

Aさんは経理の仕事を長年やっており、月末や四半期ごとの忙しさはあるけれど、特に仕事にストレスと思うほどのネガティブに感じるものはなく、同僚たちにも恵まれているようでした。プライベートでは、子供は成長とともに一緒に遊ぶことはなくなり、今は週末のテニスと奥様との晩酌がささやかな楽しみとのことでした。

「特にストレスもないし、趣味もしています。先生の本に書いてあることを気にかけていますが、秋から冬は調子が悪いのです」が面談に来られる時のAさんの口癖です。

実は私のクライアントには、このように毎年秋から冬の時期に調子を崩し産業医面談に来る人は他にもいます。いずれも、仕事ができないというほどの不調ではありませんが、「いつも(他の時期)と違う自分のようだ」とおっしゃってきます。