※本稿は、都留康『お酒はこれからどうなるか』(平凡社新書)の一部を再編集したものです。
コロナ禍で流行語にもなった「家飲み」
「家飲み」という言葉が頻繁に使われるようになった。
特に、2020年から続く新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発出と、飲食店への休業要請によって、「家飲み」という言葉を流行語にさえした。
「家飲み」とは、本来は「家での飲み会」の略であり、家に友人・知人が集まってお酒を飲むことを意味していた(注)。
注:「日本語俗語辞書」
これに対して、自宅で1人または家族とお酒を嗜むことを「晩酌」という。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大は、「家飲み」に「晩酌」をも包含させたといえる。今では、1人でも、家族とでも、友人・知人とでも、自宅で飲む場合には「家飲み」というようになっている。
海外では理由もなくお酒は飲まない
特別な理由もなく、ほぼ毎日、夕食時にお酒を飲む文化は、日本に独自なのではないか。
筆者の欧米居住時の見聞によれば、海外では、ホームパーティや「特別の日」以外に、1人でまたは家族と夕食時に頻繁に家飲みする文化は存在しないようだ。傍証として、ウオッカなど酒飲み大国として知られるロシア人で、5歳から日本に住んでいるというYouTuberの女性の言葉を引用しよう。
「アルコール消費量が多いと言われるロシアでも、お酒はお祝いの日に飲むもので、理由も無くお酒を飲むことはありません。一方で日本の場合、お酒を飲むのに理由が要らないのです。1日に飲む量は少なくても、ほぼ毎日のようにお酒を飲んでいる人も珍しくはありませんよね。休みの日には家で晩酌、ご飯に行ったら“とりあえずビール”。仕事が終わったら仲間と居酒屋で飲んで帰るし、その後コンビニで買って歩き飲みなんて人もいます。日本人の飲み方はとにかく少量を高頻度で! なのです」(注)
注:https://www.zakzak.co.jp/ent/news/190925/enn1909250011-n1.html