※本稿は、野原秀介『投資思考』(実業之日本社)の一部を再編集したものです。
給料は資本装備率で決まっている
「一億総中流」が叫ばれた1970年代から半世紀が経ち、現代の日本では経済格差が問題視されています。選挙ともなれば多くの党が格差是正を公約に掲げ、最低時給の引き上げを企業に要求しています。
中でもエッセンシャルワーカーと呼ばれる、社会が回っていくために必要不可欠な職種(介護・物流・小売など)において給料が上がらないことが強く問題視されています。
もちろん全ての労働は必要とされているからこそ存在していて、だからこそ対価として金銭の支払いが生じていることは自明であり、職業に貴賤は存在しません。
しかし、それではなぜ世の中には給与の高い仕事とそうでない仕事があるのでしょう?
その答えは“資本装備率”にあります。
そもそも労働者の給与は次の計算式によって捉えることができます。
そして付加価値をブレークダウン(細分化)すると次の通りとなります。
資本装備率が表すのは、「従業員1人当たりが生産活動を行うのにどれだけの資産を活用するか」であり、企業の有する有形固定資産を従業員の数で割ることによって算出されます。
※厳密な会計上の考え方で言えば、資本装備率の算出において、分子にはソフトウェア資産は計上しないこととなっています。しかし本項においては、実用性を重視し、以下ソフトウェア資産を含んだ意味で解釈しています。
※本項の趣旨から外れるため説明を割愛しますが、「資本生産性」は「資産一単位あたりがどれだけの付加価値を生み出すか」を表す指標です。
これを合わせると給与は以下のような式で表すことができます。
この中で最も大きな変数となるのが資本装備率です。
1人の人間が投下できる労働力は決まっていますし(最大でも1人分)、労働者への分配率も概ね20%〜60%の幅に収まるでしょう。