「よい学校」に入るかどうかで、子どもの人生はどう変わるのか。慶應義塾大学文学部の安藤寿康教授は「双生児法による研究では、異なる偏差値の学校に通った場合でも、成人になってからの収入にほとんど差はなかった。むしろ無理をして高い偏差値の学校を目指すと、ミスマッチのリスクがある」という――。(第2回)
※本稿は、安藤寿康『生まれが9割の世界をどう生きるか 遺伝と環境による不平等な現実を生き抜く処方箋』(SB新書)の一部を再編集したものです。
中学受験をしないと「負け組」になるのか?
Q 少々無理してでも、偏差値の高い中学校に行った方がよいですか?
A 双生児法による研究では、異なる偏差値の学校に通った場合でも、成人になってからの収入にほとんど差はありませんでした。
中学受験が過熱しています。特に首都圏でこの傾向は著しく、2022年入試の受験率は私立中学と国立中学を合わせて17.3パーセント。公立中高一貫校の受験者を含めると受験率は22.2パーセント、東京都だけに限れば受験率は30.8パーセントにも達しているそうです。
少子化によって大学全入時代になったと言われますが、逆によい大学、よい会社に入らないと「よい人生」が送れない、負け組になってしまう……。そういう親の危機感はいっそう高まっていると言えるのかもしれません。
また、日本は公教育への投資が諸外国と比べても圧倒的に低く〔2017年の初等教育から高等教育に対する公的支出総額の比率は、経済協力開発機構(OECD)平均の10.8パーセントに対し、日本は7.8パーセントです〕、公教育への不信につながっている可能性もあります。
子どもを持つ親が感じる不安はわかります。では「よい学校」に入る/入らないによって人生はどの程度変わってくるのでしょうか。