天才はいつ、どのようにして生まれるのか。アメリカの名門大学の人気授業をまとめた『イェール大学人気講義 天才』(すばる舎)より、歴史に残る天才たちに共通する条件について紹介する――。
開いた本の上に脳が浮かぶイメージ
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天才はチャンスをどのようにつかんでいるのか

「幸運は勇者に味方する」は古代ローマ時代の格言で、大プリニウス、プブリウス・テレンティウス・アフェル、ウェルギリウスそれぞれの言葉とする説がある。勇者になるというのは、チャンスをつかもうとするという意味だ。

でも、チャンスをつかむとは? それって、実現可能性が不確実で、50対50であってもアクションを起こそうとする、ということだろうか? それとも、「まったくの偶然さ」というように、純粋にセレンディピティに賭ける、ということだろうか?

フェイスブック創業者のマーク・ザッカーバーグは、リスクを計算したり、セレンディピティに賭けたりして自分を追いつめることはしていない。

社会に与える影響力で天才を測れるなら、ザッカーバーグが天才のレッテルを否定されることは、まずないだろう。

確かに、ザッカーバーグは最近、プライバシー問題で連邦取引委員会および全米47州の州検事総長ともめている。

それでも、現在およそ20億人が毎日1時間近く彼の創作物フェイスブックを使っている。2010年には『TIME』誌がザッカーバーグを「パーソン・オブ・ザ・イヤー(今年の顔)」に選んでいる。当時ザッカーバーグは26歳。史上2番目の若さでの栄誉となった。

準備――彼はコンピュータ・プログラミングの神童であった――と無限の野心がザッカーバーグの印となっている。

21歳になる前に彼が起こしたリスクを恐れない行動は、ときに法に触れることはあるにしても、彼の大胆な行動力のすごさを物語っている。

天才マーク・ザッカーバーグのリスクを恐れない行動

【リスクを恐れない行動 その1】ハーバード大学のコンピュータ・システムに侵入し、名簿(FACE BOOKS)から学生のデータを「拝借」した

※「フェイスブック」という名称はハーバードの「face books」――ハーバードの学生が居住するエレガントなドミトリー「ハウス」が制作している、各学生の写真つきのデータ集のこと。

2003年10月28日の夜、マーク・ザッカーバーグはカークランド・ハウスH33号室の自分のデスクの前に座り、ずっとプログラムを書いていた。その学期に入ってザッカーバーグはすでに、「コースマッチ」を完成させていた。

これはハーバードの学生が、友人は何の授業を取っているかを調べて、場合によっては学習グループをつくれるシステムだ。

しかし今度は、それよりはるかに大胆なものをザッカーバーグはつくろうとしていた。オンライン「出会い系」サイトで、ハーバードの学生が他の学生を見て、「イケてる」だの「イケてない」だのと評価できるサイトだ。

最初ザッカーバーグは、学生写真の隣に家畜の写真を並べて、比較を促すことまで考えていた。だがそこで、それよりもっといいことを思いついた。

プログラムをつくるためには、盗み――あるいは少なくとも未承認のデータ取得――をしなければならなかった。ザッカーバーグはハーバードのサーバーにアクセスして、ハウスのフェイス・ブックスから学生の写真とデータをダウンロードした。

ベン・メズリックの言葉を引用すると、『facebook 世界最大のSNSでビル・ゲイツに迫る男』には次のように書かれている。

「もちろん、それは写真を『盗んだ』ということになる。法的には、彼にその写真をダウンロードする権利はない。大学側も、学生にダウンロードさせるために公開していたわけではない。しかし、入手可能な状態で置かれているものを、手に入れてはいけないという法があるだろうか?」