子供の才能を見つけて伸ばすためには、どうすればいいのか。慶應義塾大学文学部の安藤寿康教授は「遺伝学的には、たくさん習い事をさせるほど才能が発現しやすい、というわけではない。子供がやりたいと言ったら通わせてあげる。それぐらいで十分だろう」という――。(第3回)

※本稿は、安藤寿康『生まれが9割の世界をどう生きるか 遺伝と環境による不平等な現実を生き抜く処方箋』(SB新書)の一部を再編集したものです。

子供の勉強を見る親
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「お金持ちの子どもほど、人生は有利」は本当か

Q 子どもの時にはできるだけたくさん習いごとをさせた方がよいのでしょうか?
A たくさん習いごとをさせれば、それだけ素質を発見するチャンスが高まるというものではありません。

ヴァイオリンやピアノなどの楽器、英語や中国語といった外国語に、体操教室、プログラミング、科学教室に図工教室……。世の中には子どもたちを対象にした習いごとが無数にあり、「××を伸ばすには、小さい頃から!」、「これからの時代は、○○が必要!」という宣伝文句で親を煽ります。

「これからの時代は英語はやっぱり必要だろうし、ITスキルがあれば年収の高い仕事に就けると言うし、だけど芸術的な素養も人生を豊かにするのに必要な気がするし、それに体が丈夫でないとダメだから何かスポーツもやらせないと。ああ、お金がいくらあっても足りない!」そんな風に悩んでいる人は多いのではないかと思います。

子どものうちにいろんな経験を積ませれば、才能を発現するチャンスも増えるんじゃないだろうか。お金持ちの子どもほど、人生は有利なんじゃないだろうか。習いごとに関して親が大いに悩むのは、おそらくこのあたりでしょう。それでは、たくさん習いごとをさせればさせるほど、何らかの才能が発現するチャンスは増えるものなのでしょうか。