行動できないのは意志の強弱ではない
何かをするときに「やる気が出ない」という言い訳が出たり、ついスマホを触って先延ばしをしてしまった……という経験は誰にでもあると思います。誰しもが抱えるこの悩みは、実は心理学的に研究が行われており、解決へのヒントが示されています。
行動と継続は人類が長年にわたり、向き合ってきたテーマです。多くの人は「やるべきことがやれないのは、自分の意志が弱いからだ」と思っているかもしれませんが、心理学的にはそうではないのです。行動を起こす際に必要なのは、様々な誘惑を我慢して、やるべきことに集中する自制心、つまりセルフコントロール力です。
しかし、自制心はガソリンのようなもので、決断をするたびに少しずつ消耗していきます。仮に、自分がやりたい資格の勉強に必要な自制心が30%だったとします。しかし仕事や家事で自制心を消耗してしまい、残りの自制心が10%だったとしたらどうでしょうか。スマホなどの誘惑に負けてしまい、勉強には移れません。つまり、行動に移せないのはある意味で当たり前のことなのです。自制心には個人差があるものの、その差はあまり大きくないことがわかっています。
そのため、自分が決めたことを行うには、正しい努力の方法を知り、効率的にエネルギーを使う必要があります。仮に強い自制心を持っていたとしても、それが枯渇した状況だと自制心は発揮できません。
とある実験では、目の前にチョコレートと大根を用意し、Aグループは「チョコレートを食べてもOK」、Bグループは「チョコレートは禁止、代わりに大根を食べてもOK」とし、その後、両者に難しいパズルを解いてもらいました。結果はAグループの人たちは粘り強く挑戦し続け、Bグループの人は、すぐに諦めてしまいました。
この実験が示しているのは、「誘惑(この場合はチョコレート)に耐えると、意志の力は消耗する」という事実になります。
心理学では、自制心は筋肉のようなものだと考えられています。筋肉の疲労は、休息によって回復します。同じように、自制心も時間とともに回復します。自制心が最も弱まるのは、それを使い切った直後で、その瞬間は誘惑がとても強く感じられますが、時間が経つにつれて、次第に誘惑も落ち着いていきます。これを理解することで、自制心の一時的な消耗に対処しやすくなります。
自制心を使い続けて資源が枯渇すれば、行動を起こす気力が湧いてきません。資源が枯渇してしまったら、それを補給するために休憩をとるなど、時間が必要になってきます。
心理学では、心のエネルギーを使うたびに消耗すると考える人を「有限型」、消耗されるわけではないという人を「無限型」と呼んでいます。どちらのタイプが優れているというわけではなく、有限型と無限型には、どちらにもメリット、デメリットがあります。
自制心の消耗が比較的軽いことに取り組む場合は、心のエネルギーは無限であると信じ、頑張り続けることができる無限型の人のほうが有利な傾向があります。しかし、消耗が激しいタスクに取り組む場合は、頑張り続けてしまう無限型の人のほうが不利になる傾向があります。
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