【77兆円の返済法4:日本人の死生観をリセット】

2021年春には、「入院調整依頼に関するお願い」として、大阪府の医療系トップが公用メールで「当面の方針として、少ない病床を有効に利用するためにも、年齢の高い方については入院の優先順位を下げざるを得ない」と発信したことが報道され、激しいバッシングを浴びた。

その一方で、匿名のSNSでは「若者優先は当然だ」「キャパ不足ならば仕方がない」などの意見が目立ち、匿名でないと議論できないことに問題の深刻さを感じる。

コロナ病床への入院も、単純に重症度のみで入院患者を選べば「80~90代の認知症高齢者」が大部分となる。コロナ肺炎そのものが治癒しても要介護状態は続くことが多いので「家族の拒否」「介護施設不足」などで退院先を見つけられず、病床を長期間占拠して、“コロナ病床不足”は解決しない。退院後も「自宅―病院―介護保険」のたらい回しのような状態が続き、社会保障費の赤字国債も膨れあがる一方である。

1万円札
写真=iStock.com/zepp1969
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2022年9月、英国エリザベス女王が死去したが、英王室は「安らかに息を引き取った」とのみ発表し、詳細な死因は公表されていない。逝去3日前にはトラス新首相を任命する姿が報道されたばかりであり、無粋で高額な生命維持装置もない、穏やかな最後だったのだと思われる。

そもそも、後期高齢者にとっての肺炎は「死因トップ4」に入る死因である。

2020年春、筆者はあるメディアからインタビューを受け、「今後のコロナ対策」を訊かれた。逼迫ひっぱくした医療の現場で従事する者として、また、医療費(社会保障費)が湯水のごとく使われている現状を知る者として、熟慮の上、「社会全体が、『高齢者の肺炎死は自然の摂理』と容認すべき時期かもしれない」と回答した。お金を負担する側にも限界がある。日本という国家規模の家計は真っ赤な状態だ。どこかで線を引かねばならないのではないか。そうした苦渋の気持ちを伝えたつもりだった。

しかし、筆者のこの発言は「政府は本当の死者数を隠蔽いんぺいしている」「ロックダウンしないと死者数○○万人」といった先方の期待やシナリオに沿わなかったようで、ボツになった。

高齢者医療において「死は全力で回避すべきもの」と捉える限りは、コロナ禍は終わらず、現役世代の生活も苦しくなる一方だろう。国民の総意として、高齢者の肺炎死を「自然の摂理」と捉え、「延命より、安らかな最後」と解釈することが、「コロナ禍の終結」ひいては「社会保障費の健全化」への一歩となるのではないだろうか。

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