【77兆円の返済法2:節約】
一般家庭が家計収支の改善や住宅ローンなどを返済する際に、真っ先に取り組むのは節約だろう。医療費関連では、2022年10月から、一定以上の所得のある後期高齢者の医療費の自己負担が1割から2割になる。それによって、高齢者が通院する率を少し抑えようという狙いもあるのではないか。
負担増の高齢者側としては「医療費が倍になる」として、一部の高齢者は反対デモなどを行ったが、さほど盛り上がらなかったようだ。まあ、現役世代から見れば「高齢者医療費8割分の社会保険料を負担しつつ、自分が病気になったら自己負担3割」なのだから、同情する気になれないのは当然だろう。
その他、10月から「高額所得者の児童手当が廃止」などの節約政策が予定されているが、これも節約の一環と言えるだろう。
【77兆円の返済法3:インフレで債務を圧縮】
借金返済について、一般家庭にはできない政府ならではの裏技がある。強烈なインフレによって債務を実質的に圧縮してしまうのである。仮に、物価が2倍になれば、実質的には借金が半額になるようなものである。
日本国内における実例としては、第2次世界大戦末期の軍事国債がこれに相当する。終戦直後の日本は、GDP比で200%を超える財政赤字を抱えていたが、その後のハイパーインフレによって、10年間で政府債務をGDP比15%程度に低下させ財政健全化を達成した。しかしながら、富裕層には「最高90%の財産税」が課せられ、一般庶民も年100倍以上(100%ではない)のインフレで貧困生活を余儀なくされたので、現代において推奨できる政策とは言えない。
2022年は正月から9カ月間で「1ドル約115→145円」と急激な円安が進行し、円の価値は21%も減ってしまった。他の先進国がインフレ対策として中央銀行による政策金利の利上げによる金融引き締め策を打ち出す中で、日銀はマイナス金利による金融緩和を継続しており、この金利差が存在している限り円安の進行は続きそうである。
この円安によってガソリンや食料品などの輸入品は実質値上げとなり、ウクライナ紛争による資源や飼料不足もあって、日常生活でも値上げを実感する機会が増えている。企業物価指数は18カ月連続で上昇し、2022年8月の速報値は前年比9.0%であった。
計算上は、年9%のインフレが8年間続けば物価は約2倍になり、政府債務は実質半分に圧縮されることになる。日本の金融緩和政策は「コロナ禍からの回復途上にある日本経済を支えるため」と説明されているが、「インフレによって政治家・官僚が非難されることなく政府債務を圧縮」という副次効果も狙っている気がしてならない。
インフレは「日本円や日本国債による資産を有し、年金で生活を送る高齢者」はダメージが大きいが、世代間格差が是正されるので、現役世代の中には収入減に直結する「所得増税」や「社会保障費値上げ」よりはマシな選択肢だと考える向きもあるかもしれない。