国立女子大に相次ぐ、工学部新設
2022年4月、国立奈良女子大に工学部が新設された。また、国立お茶の水女子大にはすでにある理学部情報科学科とは別に、共創工学部を準備(2024年度開設予定)している。
日本はかねてより、女性の理工系人材育成の遅れが指摘されている。経済協力開発機構(OECD)の調査によると、2019年に大学などの高等教育機関に入学した学生のうち、日本は「自然科学/工学」分野での女性率が「27%・16%」と、加盟国平均の「52%・26%」を大きく下回り、「比較可能な36カ国中で最低の割合」と報告されている。そうした中、冒頭の国立女子大2校の取り組みは、遅れを取り戻すものとして期待されている。
また6月1日に、岸田文雄総理は衆院予算委員会で、「理工系分野の学問を専攻する女性の割合を男子学生と同等の3割程度に引き上げることを目指す」と明言している。
日本再興の要は、STEM人材育成だが…
2020年からのコロナ禍対策としてデジタル化を急ぐよう叫ばれたが、わが国では今もって「紙と印鑑とファックス」の使用率はそれほど下がっていない。他の先進国に比べ日本行政のIT化の遅れは明白であり、STEM(ステム※)人材育成も急を要している。
※STEM=science, technology, engineering and mathematicsの頭文字。科学・技術・工学・数学分野を総称する用語。
そうした流れの中、2021年に日本政府はようやくデジタル庁を創設した。平井卓也デジタル改革相(当時)の「初代長官には民間出身の女性が就いてほしい」という発言もあり、事務次官に相当する初代デジタル監として一橋大学名誉教授の石倉洋子氏(当時72歳)の就任が発表された。そこまではよかった。
ところが、発表直後に石倉氏の公式ホームページでPIXTA(有料画像販売サイト)の画像無断使用が指摘され、はやくも「IT常識の欠如」を疑われる事態に。石井氏は謝罪し、ホームページを修正してデジタル監に就任したものの、2022年4月に辞任した。その理由として一部ニュースは「デジタルの知見不足」と報じた。「事務次官が知見不足で早期辞職」とは前代未聞だろう。
日本の理工系に女性が少ないのは事実だが、「STEM素養があまり感じられない人材を、女性というだけで安易に理工系要職に抜擢しても逆効果になる」と見る向きもいるかもしれない。結果的に「女にSTEMはムリ」「女は使えない」などのイメージが残るおそれがあり、かえって次世代の女性STEM人材の育成を阻害してしまうかもしれない。