いままで算数・数学教育のわき役だった「統計」や「データ活用」の分野の扱いが学習指導要領改訂によって大きくなった。なぜ重要視されるようになったのか。小学校から大学までその学びの現場を3人の専門家が解説する――。

※本稿は『プレジデントFamily 2022 春号』の一部を再編集したものです。

データ サイエンスの概念
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日本は統計教育の後進国!

情報技術の進展により、社会が大きく変わりつつある。そんななか、数字を扱う能力が重要性を増している。小学生の教科で言うと、これまで以上に算数の力が大切になる。

そのなかでも特に注力しておくべき分野は何なのだろうか。それは「統計」だ。

平成29年からの学習指導要領改訂によって、いままで算数・数学教育のわき役だった統計やデータ活用の分野の扱いが、大きく重要視されるようになったのだ。

「数と計算」「図形」などと並ぶ五つ目の領域として設定されるようになった。また、算数・数学以外の教科でもデータ活用を扱うことが決まっている。

統計学者で子供向けの統計ドリルの執筆もしている立正大学データサイエンス学部教授、渡辺美智子氏は次のように語る。

「平成20・21年の改訂学習指導要領以前は、日本の統計についての教育内容はOECD(経済協力開発機構)のなかでも最下位クラスではないでしょうか。小学校では、3年生で棒グラフ、4年生で折れ線グラフ、5年生で円・帯グラフの作り方を学び、6年生で平均値の計算を習ったらおしまいという教育でした。統計グラフを組み合わせて身近な問題解決に活用するという経験学習の機会が乏しく、中学では、データの統計分析処理は何も学習しないという状況でした。2003年PISA(OECD生徒の学習到達度調査)の数学的リテラシーでは、全体レベルは2位でも、『不確実性(とデータ)』の内容では8位と、データから推測をし、情報を批判的に読むという、統計やデータに対する読解力が低いという結果が出ています」

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