欧米の学校での統計を使った授業の実態

アメリカやドイツの学校では、統計に関する指導が身近な問題解決を事例に探究型学習として行われている。

「他の先進国では、30年以上も前から、身の回りの物事を統計的な数に置き換える、必要なデータを集める、データを批判的に分析するといった能力を育てるという大目標を掲げ授業を行ってきました。

ドイツの小学校の統計の授業では、統計数値の比較で議論させる際に、“公平な比較か?” を教師が問いかけるように指導されています。たとえば、児童たちに“バスケットボールのフリースローの成功率は、男女どちらが高いのか”といった簡単な実験をさせ、“女子のほうが成功率が高かった”という結果が出たとしましょう。そうしたら、教師は“女子のほうがフリースローがうまいと結論付けてよいか”と疑問を投げかけ、児童たちに議論をさせます。するとクラスのなかから、“女子のほうが背の高い子が多かったんじゃないの?” “スポーツのできる女子がたまたま多かったんじゃないの?” と意見が出ます。

このように、授業を通じて、実験をする、比較をする、結果を批判的に検証するというプロセスを行うことで、“比較の仕方は正しいのか”“母集団に偏りはないのか”といった統計の基礎的な考え方が徐々に身に付いていくのです」

前述のように、日本も新学習指導要領では、「データの活用」領域を設けて統計の指導を厚くしていく予定だ。

「小学1年生から高校3年生まで、各学年で必ず統計やデータ分析などに触れる形に教育課程が変わりました。小学生から、平均値に加え中央値や最頻値も学び、グラフはドットプロットやヒストグラムも習います。これまで高校で学んだ箱ひげ図は中学校で学習します。

また、探究の思考過程を明示したPPDACサイクルも学びます。PPDACサイクルとは、問題の発見(Problem)、調査の計画(Plan)、データの収集(Data)、分析(Analysis)、結論を出すこと(Conclusion)の繰り返しのことで、より深い調査やデータ分析ができるようになります」

また、大学入試でも、共通テストの数学Ⅰ・Aのなかの「データの分析」に加えて、新課程対応として、25年以降には新教科「情報」のなかでも「データの活用」の出題が決まっている。

「大学受験でも重視されることで、生徒たちも真剣に学ぶことにつながるのではないでしょうか」