リケジョ争奪戦、東工大のライバルは医学部
筆者が思うに、日本の工学部に女性が少ない最大の理由は、「理系女子高生の医学部(および、歯薬など医療系)一極集中」である。
各種メディアで特集される「医大合格者の多い高校ランキング」には桜蔭高校などのバリキャリ志向の女子進学高のみならず、白百合学園や雙葉高校のような伝統ある私立女子高が目立つ。
近年、女医の中には雑誌やウェブメディアなどで「医師夫とタワマンでホームパーティー」といった優雅なライフスタイルを公開する者もいる。その影響なのか、昭和時代から存在したバリキャリ系のみならず、「同じ医師の夫と結婚して、自分はパート程度(非常勤などで)に働く」という、医師業界でいうところの「ゆるふわ女医」を目指す女子高生も増えている。
一方、東京工業大学など理工系名門校のランキングでは、白百合学園や雙葉高校のような私立女子高を見ることはあまりない。また、そうした女子高生が「エンジニアと結婚したくて東工大を目指す」というのも聞いたことがない。
なぜなのか。
STEM女性のロールモデル不在
女子高生の医学部人気の一因は、「テレビの医療ドラマ」やメディア露出している「タレント女医」のみならず、「近所のクリニックで働く女医」など身近なロールモデルが多く、本人も保護者も具体的な将来像をイメージしやすいからであろう。
一方、数学や物理が得意な女子高生が「東大か東工大で宇宙物理を学びたい」と志望しても、「宇宙で就職あるの!」「結婚どうするの!」「子育てと両立できるの!」と親や教師に迫られて、医大受験に半ば強制的に変更させられるケースも見聞きする。
リケジョ有名人と言えば、マルチタレントの楠田枝里子氏(東京理科大)、女優の菊川怜氏(東大建築)、元宇宙飛行士の山崎直子氏(東大工院)、AV女優の紗倉まな氏(国立高専)……といるにはいるが、あまたのタレント女医に比べれば少ない。よって、リケジョ女子高生が将来像をイメージしづらいのも事実である。