地方の医師不足対策として設けられた医学部受験の「地域枠」。2007年には計173人だったが、2020年は計1679人へと拡大。医師の筒井冨美さんは「合格難易度が一般枠より低く、卒業後に地方大学の地元の病院で一定期間勤務する義務を果たせば学費も実質0円になることもある。でも、医師免許取得後に、その縛りを放棄して都市部の病院で働こうとする若手が後を絶ちません」という――。
カメラを見つめる若手の医師
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医学部「地域枠」2007年173人→2020年計1679人

今年も受験シーズンがやって来た。

今週末には大学共通テストが実施される。合格に向け、すべての受験生は追い込み中だろう。とりわけ共通テストの結果が重要視される医学部受験生は必死にやっているはずだ。成績最上位層が挑むため、合否は僅差で決まる。仮に模試判定がよくても受かるとは限らない。よって、国公立・私立を含め10校前後受験するケースも少なくない。

そうした中、国公立・私立大医学部の一部が設けている「地域枠」を第一志望にする受験生もいる。地域枠とは、年々深刻化する地方の医師不足や診療科の偏在といった問題を受けて、医師免許取得後に規定の年限(6~11年)を指定病院で働くことを出願条件にしている入試制度である(図表1:新潟県の例)。

年々深刻化する地方の医師不足を受けて、2007年には173人(医学部定員7525人中2.3%に相当)だった地域枠は、2020年では1679人(9207人中18.2%)と拡大している。

では、この医学部地域枠のメリット・デメリットはどんなものがあるのか。