少子化に歯止めがかからないのはなぜか。自らも非正規雇用者であり、地方病院で働く機会も多い麻酔科医の筒井冨美さんは「日本政府は多くの女性支援策を提供し少子化対策をしているが、その対象は東京を含む都市圏で働く四大卒のホワイトカラーの女性向けに偏っている。“出生数の稼ぎ頭”である地方在住の女性、例えば非大卒・非正規を中心としたエッセンシャルワーク職などの女性支援をもっと手厚くするべきだ」という――。
俯く女性
写真=iStock.com/Kayoko Hayashi
※写真はイメージです

岸田首相「育休リスキリング」炎上の火種 

岸田文雄首相の「育休リスキリング」発言が炎上した発端は、1月の参院代表質問にあった。

同じ自民党の大家敏志議員が「産休・育休の期間に、リスキリングによって一定のスキルを身に付けたり、学位を取ったりする方々を支援できれば、キャリアアップが可能」と述べた。これに対して、岸田首相が「育児中などさまざまな状況にあっても、主体的に学びなおしに取り組む方を後押ししていく」と応じた。

SNS上では「育休中は休んでいるわけではない」「乳幼児の育児をナメている」「育児は妻に丸投げだった男の発想」と批判的な意見が殺到して、たちまち炎上した。

本騒動について、人気ブロガーのトイアンナ氏は「私の周りで何人か育休中にUSCPA(米国公認会計士)やMBA取った人いるけど、いずれも体力お化け並み&お子さんが大人しい子だった事例」とTwitterで批判していた。

また、元リクルートでベンチャー企業女性役員が「私はリクルートに9年いたけれど、そのうち2年3カ月育休産休、4年時短勤務で、(中略)私がリーダーにすらなれない間、同期は部長や役員になっていった」とTwitterで発信し、SNSで議論を呼んだ。

ちなみに、両名とも慶応義塾大学の卒業生である。

岸田首相や大家議員の「育休リスキリング」発言には私も大いに疑問を持ったが、それ以上に慶應卒キャリア組女性2人の意見にも違和感を覚えた。「日本政府があまたの女性支援策を提供しているのにもかかわらず、少子化に歯止めがかからない」理由のひとつ、それはこうした主張がいささか幅を利かせすぎているからではないかと考えるからだ。