ブラック・ジャック』『JIN-仁-』『医龍』……医療漫画の傑作は数多いが、最近、注目されている作品は天才・善良キャラのヒーロー医師は出てこない。麻酔科医の筒井冨美さんは「今、現役医師をザワつかせている作品『王の病室』の研修医の上司は『適度に殺すのも医者の仕事だ』と言い放ち、また、実際にあった医療事故をベースにしたと思われる『脳外科医 竹田くん』の主人公は手術がド下手です」という――。
手術室でVRグラスを装着し、遠隔手術を行う医師
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最近人気の医療漫画にヒーロー医師は出てこない

医療漫画の傑作といえば、どんな作品が挙がるだろうか。

医師である筆者も、これまでたくさんの名作を読んできたが、真っ先に思い浮かぶのはレジェンド的作品の手塚治虫『ブラック・ジャック』(秋田書店)だ。無免許の天才外科医である主人公が、莫大な報酬を請求しつつ数々の重症患者を救命する。

天才外科医といえば、少年マガジン誌(講談社)で連載されていた真船一雄『スーパードクターK』、またそのシリーズで、イブニング誌(同)で連載された『K2』(同誌休刊で『コミックDAYS』に移籍)の主人公もそうだ。卓越した技術と野獣の肉体を持つ天才外科医で、臓器移植から新型コロナまで対応するドクター。子供たちはそのスーパーぶりに心躍らせた。

ドラマ化で好評を博した作品も数多い。特に以下のような、天才とまでは言えないものの善良で優秀な医師の活躍を描いた作品は印象深い。

産科医かつピアニストの『コウノドリ』(講談社)
脳外科医が江戸時代にタイムスリップする『JIN-仁-』(集英社)
大学病院の心臓外科医局を舞台にした『医龍』(小学館)

同じくドラマ化された『ゴッドハンド輝』(講談社)のような若手医師の成長をテーマにした作品も、やはり善良で努力家の先生の話だ。技術的には未熟な主人公であっても「命は尊い」「全ての患者に全力を尽くす」という、あるべき医師像が描かれる。

以上に挙げた作品は、総じて、人々が考える理想の医師が基本となっており、それが読まれる医療漫画のセオリーだった。

ところが、最近はちょっと事情が異なる。