認知症新薬は画期的なのか?
2023年9月25日、厚生労働省は大手製薬企業「エーザイ」が米国企業と共同開発した新薬「レカネマブ」について、国内での製造販売を了承したことが発表された。
これは、認知症全体の6~7割を占める「アルツハイマー病」に対する治療薬であり、年内にも公的医療保険が適用されて、患者への投与が可能になる見通しとなった。
アルツハイマー病は、原因物質のひとつとされる「アミロイドβ(ベータ)」が脳内に蓄積することで神経細胞が傷つき、認知機能が低下すると考えられている。従来の薬は、神経細胞の働きを高め、一時的に症状を緩和させることはできるものの、神経細胞が壊れていくことを止めることはできなかった。
「レカネマブ」は、原因となる「アミロイドβ」を取り除き病気の進行を抑える画期的な新薬とされ、「病状の進行を27%抑制」と発表されている。認知症患者は国内約600万人と推計されており、社会的なインパクトも大きい。
25日の同社株価は発表を受けて一時3.5%の8774円まで上げ幅を拡大した。
大手メディアは好意的に報道
テレビや新聞など大手メディアは好意的に報道し、NHKは「当事者などでつくる団体『明るい兆し見えた』」と報じている。また、気になる価格は米国と同水準ならば年390万円(2万6500ドル、1ドル148円で計算)と推定されるが、「高額療養費制度があるため、患者の自己負担は、70歳以上の一般所得層(年収156万~約370万円)の場合、年14万4000円が上限」とも報道された。
SNSは疑問と反発だらけ
一方、SNSコメントは疑問と反発だらけである。X(旧ツイッター)で「レカネマブ」を検索すると
「アルツハイマーの進行を27%遅らせるが治らない」
「要介護期間が延びるだけ」
「高齢者の少しの長生きのために、若者の1年間の稼ぎ丸々投じる勢い」
「社会保険料アップは不可避、現役世代は死にますね」
など、画期的な新薬にもかかわらず、医師・非医師を問わず歓迎コメントはほとんど見当たらない。
「390万円の薬を14万円の自己負担で使える」ということは、差額の376万円は薬を使わない誰かが負担することになる。今までの日本の社会保障政策を考えると、今回も現役世代の社会保障費増で帳尻を合わせる可能性が大きい。SNSでの現役世代の反発は当然の結果だろう。