正社員前提とした女性支援が多すぎる
日本の代表的な女性支援制度を正社員・非正社員(派遣社員・契約社員)・自営業別に図表1にまとめてみた。
正社員とそれ以外の格差が大きい。同じ日本国民なのに、出産前後の金銭的支援制度は正社員が圧倒的に多く、保活も有利である。社会保障費免除も正社員は最大2年間だが、自営業は4カ月で、5カ月目以降は保障費を払って育休正社員女性を支援する側に回らねばならない。近年では少子化対策との名目で「2人目保育料無料の認可保育園」が増えているが、そもそも1人目を認可園に入れられなかった非正規女性には意味のない制度である。
社会保障とは基本的には「恵まれた人→恵まれない人」への支援のはずだが、女性支援や子育て支援に関しては、「恵まれた正社員女性がさらに支援され、それを不安定雇用の非正規女性が支える」という格差拡大のような構図となりやすい。そして、「出生数を稼ぐ地方の非正規女性」を養分にして、「あまり生まない東京の正社員女性」を支援するシステムは、トータルでは少子化を加速するだろう。
体外受精保険適応のような全女性対象の政策が有効
2022年4月、菅義偉前政権の置き土産となった「高度不妊治療の保険適応拡大」が開始となった。東京都内の不妊治療専門クリニックでは新規患者が前年比1.3倍になり、経済的理由で体外受精を躊躇していたと思われる20~30代の若いカップルが増えているので、「高い妊娠率が期待できる」と新潟県の医師がインタビューに答えている。
また、この「体外受精の保険適応」は雇用形態や住所に関係なく日本中の女性をカバーする支援制度なので、少子化対策として期待できそうだ。
2013年には「少子化危機突破タスクフォース」として、男女各2名の産婦人科医を含んだ内閣府の会議があった。当時の議事録を確認すると「3歳になるまでは、男女とも育児休業可能に」「全上場企業において、役員に一人は女性を登用」のような、正社員前提でなおかつ「恵まれた女性がより恵まれる」的な提言が目立ち、残念ながら「体外受精の保険適応」については発言が全く無かった。
2013~22年の間、体外受精による出生数は年間3万~6万人で、年々増加傾向にある。2013年の会議で、4人の産婦人科医が「体外受精の保険適応」を強く主張し、2015年ごろから制度が始まっていれば、「患者数1.3倍」を参考にすれば、今頃は「10万人」レベルの出生数増加が期待できたかと思うと、非常に残念である。
日本の少子化は深刻化しており、その対策は待ったなしだが、非大卒/非東京/非正規女性を包括する制度を設けることが、真に有効な少子化政策への道となるだろう。