レディース健診から垣間見える東京/地方の格差

私は麻酔科の医師だが、しばしば追加で予防接種や健康診断を依頼されることがある。レディース健診のデータをチェックしていると、同世代女性でも職種や地域によって出生率に大差があることを実感する。

例えば、群馬県の食品工場だと100人中「子供ゼロ5名、1人20名、2人50名、3人20名、4人以上5名」のような分布なのが、東京都内の有名企業だと「子供ゼロ50名、1名40名、2人10名、3人以上ゼロ名」のような体感値である。都道府県別の出生率でも「平均年収トップの東京都が出生率最低(2020年=1.13)」「年収最下位の沖縄県が出生率最高(同=1.86)」と格差が生じているが、それを目の当たりにした印象だ。

結局のところ、日本の出生数を稼いでいるのは、地方の非エリート非正規女性なのである。しかしながら、彼女らの声が各種メディアに積極的に取り上げられるチャンスは少ない。

陽だまりの中であかちゃんと楽しい時間を過ごす母親
写真=iStock.com/Yagi-Studio
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インフルエンサーだが少数派の東京エリート女性

一方、数の上では少ないが影響力が大きいのが東京のエリート女性である。政府の女性支援○○会議などに参考人として呼ばれるのは、「東京在住、有名大卒、さらに大学院や留学、公務員・大企業正社員・大学教官」などが典型例である。

言動を見る限り、彼女たちの視界には地方の非正規女性の存在はない。その主張内容は、正社員就職を前提に「育休延長を」「男性育休も」「時短取得しても給料や昇進を可能に」といったものである。

そして、育休・育児時短のような制度が自分の職場に普及すると、「女性管理職・女性役員・女性教授を増やせ」とアピールしていく。そのこと自体は間違っていない。ただ、「自らの立場をより有利にする」ことに腐心し、「地方や非正規女性にも育休延長などの制度を広げる」ということには思いがいたらないタイプが多いように感じる。