医師はいちばん安定して、オイシイ仕事
「医学部の偏差値を他の理工系学部並みにできたら、日本経済のさまざまな問題はだいたい片付くし、医療の質も改善する」と、私は昭和の終わりごろから主張し続けている。
戦後、医学部の偏差値は一貫して上がり続け、いまや東大、京大の他学部の偏差値より、かなりの地方大学の医学部のほうが高い。日本では医師がいちばん安定して、しかも、オイシイ仕事だからだ。
「医師会をバックにした開業医がオイシイだけで、勤務医は違う」という人もいるが、医師の半分以上は一生勤務医であり、医学部人気は勤務医になることを前提としている。それに、開業医だけでなく勤務医でも、自分の子供を医学部に入れたがる割合が他の仕事よりはるかに高い。これは、勤務医にとっても医師が「自分の子供にさせたい良い仕事」である証拠だ。
医学部の医師国家試験合格率は非常に高いため、18歳で医学部に合格すれば、たいてい医師になれる。官僚、弁護士、銀行員、ジャーナリスト、女子アナ、客室乗務員などに確実になれる学部があれば偏差値は高くなるだろうが、そんな学部はない。就職とは、22歳の段階で本人が自分に向いた仕事かどうか考え、そのうえ採用する側が適性を見極めて採用することで決まるものであることと比べるとアンバランスだ。
食いはぐれがなく、復職のハードルが低い
企業などに就職してからも好きな分野の仕事をさせてもらえるとは限らず、勤務地も希望通りとはいかないが、医師は自由度が高い。地方での医師不足とか、産婦人科医がいないことが問題となっているのは、大きな組織が人事の一環として、人材配置をする制度が整っていないからだ。
医師免許がないとできない業務が多いから、超高齢とか問題がある医師でも食いはぐれがなく、育児のために何十年間、休んでいてもそれなりの待遇で復職できる。
私はこうした医療を巡る問題を指摘し続けてきたが、なかなかメディアで取り上げさせてもらえなかった。しかし、新型コロナ禍で日本の医療問題が明らかになってからは、『日本の政治「解体新書」:世襲・反日・宗教・利権、与野党のアキレス腱』(小学館新書)、『日本人がコロナ戦争の勝者となる条件』(ワニブックス)といった本を出したり、雑誌にも書かせてもらえるようになり、医療関係者も含めて賛同者も多くなった。