医学部地域枠のデメリット
【デメリット1:規定年数(6~11年間)、指定地域(指定専攻科)での勤務義務がある】
地域枠には、その大学がある都道府県の指定地域での勤務義務がある。自治体によって6~11年のバラつきがあるが、自治医科大(入学者全員に対して、入学金・授業料などの学費を貸与する修学資金貸与制度がある)にならって「卒後9年間」とする医大が多い。
だが、入学時には納得していても、6年間の医大生時代のうちには想定外の分野に興味を持つことは十分考えられる。女性の場合はモロに結婚・出産の適齢期と被ってしまう。よって毎年のように「美容外科に行きたい」「東京の恋人と結婚」などの理由で地域枠義務を放棄・離脱する若手医師が出現する。
「約束は守るべきだ」という意見が多いが、「高3生に、24~35歳の将来計画を確約させることにムリがある」という反対意見も根強い。
【デメリット2:離脱すると奨学金や違約金の返還義務】
地域枠を放棄・離脱した場合、多くの医大では奨学金を一括返済しなければならない。私立なら数千万円の支払いを命じられるわけだが、“抜け道”もある。医師免許を取得すれば、「予防接種で日給10万円」レベルのアルバイトが多数あり、総額3000万円前後の借金もなんとか返済できる可能性は高い。例えば、山梨県は奨学金返済に加えて違約金を設け「地域枠離脱者は最大2340万円一括返済」を課しているが、効果は限定的かもしれない。
【デメリット3:離脱すると有名病院に就職困難】
この地域枠の勤務義務は、2018年度まではいわば紳士協定で、奨学金返金以外の罰則がなかった。そのため、「体調不良」「東京で子育てしたい」「親族の病院を継ぐ」「祖父の介護」のほか、明らかに虚偽とわかるような理由で都市部へ転職する離脱者が後を絶たなかった。
そこで厚生労働省は、2019年度からは「元地域枠医師を雇った都会の病院は、補助金減額」という一歩踏み込んだ策を講じた。同年には、「茨城県地域枠医師を雇った東京医科大病院(東京都新宿区)」など5つの病院が補助金を減額されている。よって、厚労省からの補助金対象となるような大病院では、離脱した元地域枠医師の雇用は慎重にならざるを得ないだろう。