難関東工大の「女子枠」募集が女子高生に不人気のなぜ
2022年11月、日本を代表する難関国立理工系大学である東京工業大学が、2024年度入試から「143人(1028人中)の女子枠」推薦入試の計画を発表した。
なぜ今、女子枠なのか。同校のホームページ(HP)では「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の取り組みの一環」「本学の女子学生比率は約13%と低く、この取り組みで女子学生比率が20%を超える見込み」「理工系分野における女性の活躍推進を目指す」と説明している。
女子枠の入試要項を確認すると「共通テスト+面接試験」のみで合否判定する専攻が多い。従来の東工大の一般入試では、「数学は数Ⅲまで、理科は物理/化学が必須、英語の配点は数学の半分」という典型的な理系入試であり、特に180分間を要する数学の難度には定評がある。中でも情報理工コースは近年の情報系産業の発展を受けて、東大の非医学部をしのぐ勢いで難易度が上昇している。
そうした状況で「ほぼ共通テストだけ(面接を除き、2次試験なし)で東工大に入れる」ことは女子高生にとってありがたい話のように見える。だが、この試みは大学の狙い通り「理工系分野における女性の活躍推進」につながるのだろうか。
問題1:女子枠合格者は東工大の授業内容についていけるのか
女子枠合格者といえども、入学後は一般枠合格者と同条件でカリキュラムをこなすことになる。東工大のカリキュラムは、高校時代に微分積分をマスターしていることを前提として、偏微分・重積分・フーリエ変換……などの高等数学を学ぶことになる。試験に合格しなければ容赦なく留年してしまう。数学オタクには垂涎のカリキュラムだが、数学イマイチ女子には苦行となるのは必至だ。
一部の文系学部の女子学生は、「非モテ男子に色目使ってノートを借りて、一夜漬けすれば単位が取れる」といった甘い世界もある、と聞く。また、東大ならば理系で入学しても、入学後に「教養学部」のような学部に進路変更することも可能だが、東工大には理学部と工学部しかなく、数学がそれほどではない女子には逃げ場がない。
女子枠入試は表面的な学生女性率を上昇させるだろうが、「元女子枠合格者が高確率に留年/退学」となれば元も子もなく、「理工系分野での女性活躍推進」は失敗してしまう。