問題4:そもそも女子高生や親は喜んでいない…年功序列こそが女性活躍の敵

東工大女子枠についてSNS検索してみると、「男性受験生親の怒り」が多いのは当然だろうが、意外なことに女子高生やその保護者にもあまり歓迎されていないのだ。なぜなのか。

思うに、日本型雇用システムにはいまだ「年功序列・終身雇用」の名残りがある。仕事にフルコミット可能な男性ならば耐えられても、妊娠出産のようなライフイベントの多い女性には不向きである。

日本の企業が理工系の女子学生に不人気である最大の理由は、就職先の大企業の多くに「最初の10年は会社の指示に黙って従え」のような昭和的で非合理的なシステムが残っているからである。そうした傾向をよく察知している聡明な女子高生たちは、年功序列や老人支配の香りのする組織には近づかないだけのことである。

というわけで、東工大で「理工系分野における女性の活躍推進」につながりそうな対策を考えてみた。

対策1:医学部生/研修医の工学系授業参加を認める

理工学部の低い女性率の理由のひとつが、高学力の理系女子高生が医学部に一極集中していることである。「出産後も年収1000万円が保証される理系専門職」といえば、日本では事実上、女医しか存在しなかった。

東工大は、同じ国立の東京医科歯科大と2024年度に合併することが予定されている。医科歯科大医学部は都内では東大医学部に次ぐ難関とされ、合併後の東工大は日本の数学トップクラスの学生を自動的にゲットできることになる。

「素粒子物理学に興味があったけど、親に反対されて医学部に行った」という医学生は特に女性に多い。また医科歯科大の附属病院には約200人の研修医が在籍しているが、その中にも「実は医学より情報工学に興味がある」というような人材が含まれるだろう。

医科歯科大に限らず、現在の研修医カリキュラムは「働き方改革」と称して、「17時以降は帰宅可能」「最大90日(実質4カ月)欠席可」というゆるいプログラムが多い。そこで、理工系素養のある医学生、もしくは研修医(医師免許保持)を男女問わずに工学部に迎え入れて授業聴講を許可し、さらには実験や科学論文にチャレンジしてもらうのもよいだろう。東工大としては医科歯科大出身の医師の頭脳を取り入れて「女性の活躍」を目指すことができるのだ。

テルモハート(東京都渋谷区)は医療機器メーカー「テルモ」の米国子会社であり、初代CEOの野尻知里氏は女医でもある。高校卒業後は京都大理学部に進学するも、卒業後の進路が「学校の先生」か、「お茶汲み」しかないと感じ、同大医学部に再入学した。

心臓外科医としてキャリアを歩んだ後に人工心臓開発者に転じ、その仕事ぶりは2008年にNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」で放送されるも、残念ながら食道がんのため63歳で亡くなった。合併後の新東工大には、野尻氏のような医学部に埋もれている真性リケジョの発掘に尽力してほしい。

動画で見る東京工業大学 「東京工業大学 高校生・受験生向けサイト」より
動画で見る東京工業大学 「東京工業大学 高校生・受験生向けサイト」より