日本の排他的経済水域内で取れたサンマはわずか6%
日ロ関係の悪化が、漁業に悪影響を及ぼしています。
まず、秋の味覚を代表するサンマです。北海道の東の沖合で、8月中旬から棒受け網漁が始まりました。棒受け網漁というのは、魚群探知機とサーチライトで群れを探し、集魚灯を使って網の中へ誘導する漁法です。
サンマの漁獲量は、昨年まで3年連続で過去最低を更新しています。漁場は次第に沖合へ移動していて、昨年の漁獲量のうち94%は、日本の排他的経済水域(EEZ)の外の公海で取れたものでした。
温暖化の影響で海水温が1℃上がると、魚にとっては10℃の上昇に匹敵するそうです。2℃上がれば20℃分です。好漁場だった海域に魚が寄り付かなくなって、漁場はロシア側へ異動していきます。
サンマの漁場となる公海は、根室の花咲港から東へ千キロ以上も離れています。しかも多くの船が、ロシアが主張するEEZを南から迂回するルートを取ると決めています。ロシアのEEZを通過する直線ルートに比べ、距離と燃料代が3割増しになります。直線なら5日で往復できるところが、7日かかってしまいます。
根室東方沖は、日ロの双方がEEZだと主張している海域です。EEZ内を航行するのは自由ですが、違法操業があれば取り締まる権利が、双方に認められています。日本のサンマ漁船は、この海域でロシア側に拿捕される危険を避けるため、迂回する航路を取らざるをえないのです。
ウクライナ侵攻前から起きている問題
8月8日付の北海道新聞の朝刊が、経緯を説明しています。
【根室】全国さんま棒受網漁業協同組合(全さんま)は8日、道東沖サンマ棒受け網漁船によるロシア主張の排他的経済水域(EEZ)内航行について、ロシア側から7月に「直線的に、停止せずに進む必要がある」と指摘があったことを明らかにした。ロシア主張EEZ内で漁獲を疑われない行動を求めたものとみられ、全さんまは10日のサンマ漁解禁を前に漁業者に注意喚起した。
全さんま幹部が、根室市で開かれた漁業者に対する非公開の指導会議の後、明らかにした。ロシア側の指摘は日本側の問い合わせに対するものという。
全さんまはこの日の指導会議で漁業者に、ロシア側の回答を示した上で、EEZ内でのソナー使用や、蛇行など魚群探索と疑われる行動を取らないよう注意喚起した。八木田和浩組合長は「(違法操業の)疑義を持たれる操業はやめ、航行を十分に気をつけてほしい」と語った。
こうなった原因はロシアのウクライナ侵攻を巡って日本が非友好国に認定されたからだとする報道がありますが、事実ではありません。これは、一昨年から続いている事態だからです。