中国の手に落ちたスリランカの悲劇
インド半島の先端に浮かぶ島国・スリランカが、経済危機に瀕している。
ラニル・ウィクラマシンハ首相は7月5日、議会での演説を通じて「国家の破産」を宣言した。美しい景観から「インド洋の真珠」とも呼ばれ、地政学上の要衝でもある人口2200万の国家は、中国の「債務の罠」に陥り破滅へと向かっている。
スリランカは長引く外貨準備不足で物資の輸入に支障をきたしており、国民生活は大混乱に陥っている。子に食糧を与えようと出がらししか口にしていない親たちや、急ごしらえの売春宿で体を売って食べ物を買う女性たち、そしてガソリンを買うために10日も列に並ぶドライバーなど、悲惨な現状が多く報じられるようになった。
その元凶は、一族支配による悪政と中国への経済依存だ。7月14日に辞任したゴタバヤ・ラージャパクサ前大統領は兄弟で大統領と首相を務め、要職を一族の関係者で固めていた。民主主義国家を標榜する同国にありながら、独裁・腐敗政治の蔓延を招くこととなる。加えて見逃せないのが、中国による籠絡だ。
「債務の罠」で重要港湾は植民地に
2000年代にインフラ整備を積極的推進したスリランカは、中国などへの対外債務を膨らませた。巨額の返済に行き詰まり、港湾国家構想の中核であった南部ハンバントタ港の運営権を、中国国営企業に99年間供与する事態まで発展している。
この一件は、中国が仕掛ける「債務の罠」の典型的な事例だとして国際的な注目を集めた。中国が途上国に対して多用する手口に、高額なインフラ整備費を厳しい返済条件で貸し付けるものがある。相手国が返済条件に応じられなくなるのを待って、新設したインフラ施設の運営権の譲渡を受ける手法だ。