急にキレて、部下に当たり散らす「パワハラ体質」の上司には、どう対応すればよいのだろうか。精神科医で産業医の井上智介さんは「キレやすい上司は、支配欲や自己愛が強い人が多い。そしてそんな上司は部下に対し『指示したことしかやらない』といった不満を抱えやすい」という――。
こちらを指さし怒鳴る人
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支配欲や自己愛の強い人はキレやすい

いわゆる「キレる」人がキレるきっかけとしてよくあるのが「自分の思い通りにならないから」です。そして、自分の思い通りにしたいという気持ちの背景には、相手に対する支配欲や、自分の気持ちを何よりも優先させたいという自己愛があります。キレる人は、支配欲や自己愛が強い人が多いのです。

そんな人が上司になると、「部下のマネジメントとは、自分の意見に従わせることだ」と勘違いすることが多い。部下が自分と違う意見を言ったり、反論してきたり、自分がイメージした通りのスピードで仕事を進められていなかったりすると、「自分の思った通りに部下が動かない」とキレるのです。

「キレる上司」が褒めるとき

また「キレる上司」は、部下の成功を「条件つき」でしか評価しない傾向があります。部下の成果が自分の実績につながっていれば「よくやった」「ありがとう」と褒めるけれど、関係なければ何のリアクションもしないのです。

例えば、部下が何かのプロジェクトを成功させたとします。初めて一人で責任ある仕事をやり遂げたのですから、本来であれば上司は「頑張ったね」「よくやったね」と喜び、本人の頑張りを褒めたりするでしょう。しかし、キレる上司の場合は、部下の成長を喜んだりすることはほとんどありません。部下の実績が自分の評価のプラスになれば褒めたりしますが、部下の成長は見ていないのです。

ですから、上司がどんな時に褒めるかを見ると、キレる上司かどうかを見極めるポイントになります。部下の成長を一緒に喜んだり、褒めたりしない。部下の実績が自分のプラスになるときだけ褒めるという上司は、支配欲や自己愛が強く、少しでも自分の思い通りにならないとキレるタイプの可能性が高いでしょう。

プレーヤーとしては優秀な「キレる上司」

厄介なのは、こういったタイプの上司は、プレーヤーとしては優秀なことが多いのです。支配欲や自己愛の強さは、自分が成果を出すために周りを巻き込む力、成果へのこだわりや、評価されたいという気持ちの強さなどにつながることがあるからです。

そして、結果をしっかり出しているからこそ、上の立場になるわけですが、上司に求められる、人を育て、成長をともに喜ぶ力を身に付けてはいません。むしろ、これまで結果を出してきたからこそ、自分のやり方へのこだわりが強く、自分が思う通りに行動しない部下へのダメ出しが激しくなってしまいます。少しでも期待から外れた行動をとると、イライラしてキレてしまうのです。