新入社員がすぐに辞めてしまう会社には共通する特徴がある。『だから僕たちは、組織を変えていける』(クロスメディア・パブリッシング)を書いた斉藤徹さんは「いまの若者たちは、他人から要求や価値観を押し付けられることを嫌う。それなのに規律を押し付けるので、新入社員がどんどん辞めてしまう」という――。
新常態の春に桜を見ている男
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なにより「価値観」を押し付けられることを嫌う

Z世代は、1996年以降に生まれ、スマホを片手にソーシャルメディアで育った世代のことです。彼らは、新たな価値観をあたりまえと感じ、人のつながりや多様性を大切にする若者たちであるため、他人から要求や価値観を押し付けられることを嫌います。

では、どうすれば「自分から」やる気になってくれるのでしょうか。

モチベーションアップのための手法として取り入れられることの多い「報酬」について、まずは見てみましょう。ふたつの実験を紹介します。

1953年、ハーバード大学の神経学者ロバート・シュワブは、筋肉疲労の仕組みを調査するために、棒にぶら下がって我慢できる時間を計る実験をしました。

普通の人が我慢できる平均は50秒でしたが、5ドル札(今の約4000円に相当)を見せて「これまでの成績を上回ったら、このお金をお渡しします」と伝えたところ、参加者は平均約2分もの間、鉄棒にぶら下がり続けました。

また2007年、ハーバード大学の経済学者ローランド・フライヤーは、3.6万人の子どもに総額10億円ものお金を支払い「お金の力がどのくらい成績を引き上げるか」という実験を行いました。

米国五都市を対象にしたところ、一都市だけが成績アップに成功しました。他の四都市が「成績があがった子ども」にお金を支払ったのに対して、その都市は「指定した課題を達成した子ども」にお金を支払ったのです。しかし、効果は長くは続かず、一年たつと改善率は半分に低下し、報酬なしのワークに興味を持たなくなるようになりました。

これらの実験からわかることは、お金は誰でも努力すればできる単純なことに対しては、一時的な動機づけになるということです。「一時的に我慢する力を高める」とも言い換えられます。

ただし、継続すると効果が薄れ、いったん報酬を出すと報酬なしでは努力しなくなってしまいます。長期的に見ると、麻薬のように恐ろしい負の影響があるのです。