松孝からは一度に80~100箱納入され、数日熟成させたものを各店舗で仕込んでいる。熟成度合いの確認で大事なのは柔らかさだ。あまり若いバナナは、硬くて粘着度が高くなりがちだ。
味については、エクアドル産にこだわっている。フィリピン産が一番多く出回っているが、エクアドル産のほうが甘みはある。ひと箱3000円程度で購入していたが、足もとの物価上昇で1割以上値上がりしている。
バナナスタンドではSDGsの観点から、もげたバナナの活用にも積極的に取り組んでいる。味は通常のバナナとほとんど変わらないのに、値段はほぼ半額だ。コストカットにもつながるが、あまり多くすると、味が落ちてしまう可能性がある。
焼きそばからの完全撤退を決断
「ニノさん」(日本テレビ系)への出演の反応を確認するためにぼくが神保町に向かったのは、2020年11月のことだった。15時過ぎに店に向かうと、カウンターに女性2人と、テーブルに男性2人がいる。黒田は店の隅で、ある金融機関の担当者と話していた。
千代田区が飲食店に対して導入した、1000万円を上限とした融資について説明を受けていた。信用保証協会の費用を区が肩代わりするという制度で、無保証、無利息という飲食店にとってこのうえない仕組みだ。
「ニノさん」出演以来、取り上げられたナポリタンの売り上げが順調に伸びていた。しかし神保町店の平日で50~60食程度と、爆発的な売れ行きというわけではない。ソース焼きそばと違って冷めると味が落ちてしまうため、テイクアウト営業をしていないのが要因だ。
2度目の緊急事態宣言が迫っていたことも、客数に響いていた。夜は10食程度にしかならないことが多く、早く店を閉めるようにした。完全に食事のスタイルが変わってしまった。焼き麺スタンドが焼きそばの販売を停止したのは、2021年5月のことだった。
1号店の成功が、駅ナカ出店の呼び水になる
2021年は、バナナジュースの多店舗展開の年になった。
出店のスタンスは変わらない。人通りの多い駅近の好立地で、3坪ほどの小区画だ。初期投資は数百万円に抑え、家賃は売り上げ変動にする。店の外にベンチはあっても、テーブルは置かない。
仙川店の成功に、最初に反応したのが東急だった。東急線池上駅で、改札を出てすぐの場所に出店してほしいという。3月のオープンで、売り上げは1日150~200杯のペースだ。
駅ナカにある仙川に比べると立地としての魅力は劣るが、駅の外にあることで並んでも待つという客が一定数いることがわかった。新しい駅ビルが珍しいという効果もある。家賃は仙川と同じく売り上げの15%だ。