元大手証券マンの黒田康介さん(29)は、4年前に脱サラして焼きそば専門店を始めた。だが、コロナ禍で客は急減。そこで目を付けたのがサイドメニューの「バナナジュース」だった。バナナジュース専門店であれば、生き残れるかもしれない。黒田さんの元同僚で、兼業作家の町田哲也さんがリポートする――。(第7回)
日本人の大好物、バナナの持つ驚きのポテンシャル
この30年間で、日本の食卓は大きく変わった。
家計調査によると、1世帯当たりの平均消費支出(2人以上世帯)は、393万円から334万円へと約15%下落している。所得の減少から食費を切り詰める世帯が増加しており、食料費もこの間約11%減少している。深刻なのはぜいたく品とみられやすい生鮮果物で、約30%減少している。
興味深いのは、メロンやイチゴといった高価格帯の商品が売れなくなっているだけでなく、より身近なリンゴやみかんの販売も40~50%落ち込んでいることだ。中央果実協会のアンケートによると、果物を食べない理由として、値段の高さ、日持ちの悪さ、皮を剥く手間、ほかに食べる食品の存在、が上位に挙げられている。
そんななか、急激に消費量を増やしているのがバナナだ。
市場全体の消費量は、30年間で約60%拡大している。商品開発が進んで甘いバナナが増えているのに加えて、高い栄養素や食べやすさも後押ししている。きわめてポテンシャルのある食べ物だ。
2020年8月末、黒田が出店したバナナジュース専門店「バナナスタンド」仙川店の売り上げが好調な背景には、このような素材としてのバナナの魅力があった。オープンバブルが静まっても1日350~400杯は出ており、売り上げで13万~14万円に達している。
脱サラして開いた「焼きそば店」の教訓
9月の売り上げは450万円と、200万円程度にとどまった神保町と下北沢の2店合計した焼きそばの売り上げの倍以上になった。駅ナカという立地が影響した面は大きいが、黒田の見立てでは人通りが多いだけではダメだという。