なぜ、同じようなアイテムを選んでしまうのか?
それにしても「クローゼットに黒いパンツが3本以上ある」「似たようなアイテムが多い」という人は、なぜそうなってしまったのだろうか。
基本的に、人は洋服を選ぶ際、「自分に似合うと思っている」あるいは「誰かに似合うとほめられた」アイテムを選ぶことが多い。わざわざ、似合わない洋服を着る人はいないだろうから、これは当たり前のこと。ただ、一度、自分の“鉄板コーデ”を見つけてしまうと、なかなか抜け出せなくなり、それ以外のアイテムは、無意識に「どうせ似合わない」と初めから排除してしまっている。
たまに、これまでとは違った洋服を選んでも、なんだかしっくりこなくて、落ち着かない。結局、クローゼットの奥にしまいこむことになる。
そうなると、結果として、クローゼットは、自分が安心できる似たような服ばかりになる。その傾向は、年齢があがるにつれて強くなり、買い物に行っても手に取るのは同じような色やデザイン、雰囲気のものが中心。どんどん冒険できなく(しなく)なるわけだ。
しかし、加齢とともに、体型は変わり、好みや流行も変わる。コロナ禍で生活様式が変わり、求められるスタイルも大きく変化した今、クローゼットの中身をいったんリセットし、“今の自分”に似合うアイテムもバージョンアップしてもいいかもしれない。
実は、「同じようなものばかりを買う」という傾向は、ファッションアイテムにとどまらない。
日用雑貨や食料品、家電製品、さらには金融商品でも考えられる。筆者はFPとして、相談者が保有する金融商品の一覧を拝見する機会も多い。例えば、投資信託の銘柄をいくつも持っているのに、すべて投資先が「日本株式型」で、正しくリスク分散できていない。
あるいは、医療保険は複数加入して、入院保障はあるのに、通院保障がまったく付帯されていないといったちぐはぐなことが少なくない。
選んだ理由を聞いてみると、「金融機関に勧められて」とか「雑誌のランキング上位にあったから何となく」とかいった漫然とした回答が返ってくるばかり。せっかくの投資や保険なのに、目的に応じて使い分けができているとは言えない状態である。
こうした状態では、お金が貯まるわけがない。
自分に必要かどうかを見極め、ちゃんとニーズに合わせて使い分けていなければ、黒いパンツも投資信託も1本で十分なのである。