日本経済はなぜ勢いを失ったのか。ジャーナリストの田原総一朗さんは「経団連の中西宏明前会長は『日本は3周遅れのランナーに落ちてしまった』と嘆いていた。しかし、私はまったく絶望していない。なぜなら若者たちの熱量は、私の学生時代よりも高いからだ」という――。

※本稿は、田原総一朗『コミュニケーションは正直が9割』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

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安倍晋三の危機感「10年後日本企業は壊滅する」

現在、私が取り組んでいる問題の一つに、日本企業をいかに再生させるかというものがあります。

じつは2017年11月に安倍晋三さんが再選された後、安倍さんを財界人や経営者に紹介しました。財界人、経営者の人たちは誰もが相当の危機感を持っていました。このままだと、10年後日本企業は壊滅すると。それで私が仲介役となったのです。

ジャパン・アズ・ナンバーワンと言われ、日本の一人当たりのGDPが世界第2位だった1989年当時、時価総額で世界のトップ50社に、日本企業がなんと32社入っていました。1位から10位までの中にも6社入っていて、1位はNTTでした。

田原総一朗『コミュニケーションは正直が9割』(クロスメディア・パブリッシング)
田原総一朗『コミュニケーションは正直が9割』(クロスメディア・パブリッシング)

ところが30年後、安倍さんが総理大臣のときは、時価総額トップ50社の中に入っているのはトヨタ1社だけ。一人当たりGDPは世界23位。このままじゃ日本は完全に終わりです。

このことを私や経済人らが訴え、安倍さんは日本の産業構造を抜本的に改革しなくてはならないと考えました。

安倍さんは信頼していた西村康稔さんを経済再生担当大臣に据え、私もそこに参加してプロジェクトチームを作りました。

経産省、財務省、厚労省の30代から40代の課長クラスの人間を3人ずつ、計9人。それに齋藤健農林水産大臣をはじめ、自民党国会議員などが加わって合計16人のチームでした。