正社員の待遇が悪化の一途だ。なぜ“特権”が消えつつあるのか。人事ジャーナリストの溝上憲文さんは「元凶はバブル経済崩壊後の経済不況で多くの経営者が社員を“人材(財)”ではなく“コスト”と見なしたこと。会社が生き残るためになりふり構わず社員や人件費の削減に踏みきった」という――。
賃金と書かれたカードをカットしようとしているハサミ
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正社員の既得権を剝ぎ取ったのは竹中平蔵氏なのか

正社員の待遇が悪化の一途をたどっている。

前回(※)の記事では正社員の特権ともいえる扶養手当、住宅手当などの諸手当がなくなりつつあることに触れた。

「正社員の特権がどんどん消えていく」扶養手当、住宅手当…諸手当が“全廃止”される日

正社員の特権はそれだけではない。過去にはさまざまな特権があったが、今では風前のともしびの状態にある。

ところで、そうした正社員の既得権を剝ぎ取ったのは元経済財政政策担当大臣の竹中平蔵氏(慶應義塾大学名誉教授)であるといった意見がネット上で飛び交っている。筆者の前出記事に対してもそのようなコメントがあった。

確かに竹中氏は「日本の正社員は世界一守られている」という主旨の発言をしている。正社員を既得権益者と指弾し、解雇規制緩和論者としても知られるが、実際のところはどうなのか。

そもそも正社員の特権とは何か。非正社員にはなく、正社員の特権ともいえるのは諸手当以外にも次のようなものがある。

① 終身雇用(60歳定年までの雇用保障)
② 年功的賃金(年齢給、定期昇給等)
③ ボーナス(給与の5カ月分相当)
④ 交際費
⑤ 退職金

正社員になればこうした待遇を受けられることで誰もが後顧の憂いなく仕事に邁進することができた時代もあった。ところが時代の流れととともに徐々に剝がれ落ちていった。

なぜそうなってしまったのか、そしていつから始まり、その源流は誰(どこ)にあるのかを探ってみたい。