「3人の選手が獲得した(FAの)権利を尊重し、ノーテンダーとする」。プロ野球の日本ハムの稲葉篤紀GMは11月にこう発表したが、企業にもノーテンダー社員はいる。ジャーナリストの溝上憲文さんが取材したある人事部長は「いてもいなくてもいい、本音ではいらない人材。野球で言えば打率2割5分の人で、社員の7割が該当する。課長・部長の管理職にも多い」と語る。戦力外宣告される前に転職し“再契約”の道を探るしかないのか――。
ビジネスチーム
写真=iStock.com/Yagi-Studio
※写真はイメージです

人事部「7割はノーテンダー社員、いてもいなくてもいい人材だ」

新庄剛志新監督を迎え注目されているプロ野球の日本ハム。稲葉篤紀GMが11月16日、チーム内の3選手について、「選手が獲得した(FAの)権利を尊重し、ノーテンダーとすることを選択した」とコメントしたのは記憶に新しい。

この「ノーテンダー」は聞き慣れない言葉だが、決して「戦力外」ではなく、プロ選手としての実力はあるが年俸に見合う働きができていない選手を自由契約状態にすることをいう。

メジャーリーグで使われる手法で、日本では日本ハムが同様の手法をしばしば使っている。例えば、今回ノーテンダーとなった大田泰示選手の今季の打率は2割程度、年俸は1億3000万円だったが、年俸5000万円(推定)でDeNAに移籍した。

実力はあるがコストパフォーマンスに見合わず、本音ではいらない“ノーテンダー社員”は企業にもいる。高校時代に野球経験のあるサービス業の人事部長は「たくさんいる」と語る。ではどんな人か。

「野球で言えば打率2割5分の社員。要するに、いなくても代わりがきく人だ。日ハムが最初にノーテンダーを出したが、自由契約なのでクビにはならないし、いてもらってもいいけど、そろそろ若手にバトンタッチしてももらいたい人などだ。企業でいえば、新規事業ではなく、収益モデルが築かれ儲かっている事業部門にいる人で、トップ営業のビジネスパーソンなど上位3割以外の残り7割は全員ノーテンダーになる可能性が高い」

人事評価でいえば、SABCDの5段階評価のうちB評価以下の人たちだと言う。

「B評価の社員は昇給の対象になりますが、会社の必要性からいったらノーテンダーだ。例えば、B評価の人が転職したいと言ってきたとき、表向きは『そうか残念だな』と言いつつ、彼がいなくなると今の現場が一時的に回らなくなる不安はあるものの、本音では、中・長期的にはポストが空いて若手を抜擢できるなど『辞めてくれてよかった』という存在だ」

さらにノーテンダー候補になりやすいのが課長、部長などの管理職だ。

「会社が中・長期的な人材方針を打ち出そうとすると、その瞬間に45歳を過ぎた人たちをノーテンダーと考えるだろう。優秀な若手も育ってきたのでチャレンジさせたいが、事業も成長していないのでポストも増やせない。そうなると狙われるのは今の課長、部長だ。万年課長はとくに危ない」