OECDによれば、日本の年間の平均賃金(非正規社員含む)は424万円で35カ国中22位。お隣韓国の462万円を下回った。人事ジャーナリストの溝上憲文氏が日韓の管理職(正社員)の給与を比較したところ、「例えば、ITサービス(営業職)の場合、韓国(セールスディレクター)は970万~1746万円、日本(部長級)800万~1200万円。業界・職種を問わず、韓国に見劣りする額になっている」という――。
日本と韓国の国旗
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平均賃金「日本424万<韓国462万」は非正規社員含む調査

日本は給与が上がらない状態が長く続いている。実質賃金は1997年をピークに長期低落傾向にあり、個別賃金指数は97年を100とした時、2020年は95にとどまっている。

最も下がっているのは中小企業(従業員10~99人)の社員だ。大企業(1000人以上)社員の月給(所定内賃金)が97年に比べて2020年はマイナス8700円なのに対し、中小企業の社員は2万1300円も落ち込んでいる。

岸田文雄首相は12月6日の所信表明演説で賃上げした企業に優遇税制を引き上げる方針を表明。具体的には賃上げした大企業に法人税額の控除率を30%、中小企業は40%に引き上げる予定だ。しかし、日本企業の約6割が赤字で法人税を支払っておらず、控除の実効性を疑問視する声もある。

20年以上も賃金が上がらない状態の日本に、今年、追い打ちをかけるように飛び込んできたのが、OECD(経済協力開発機構)が発表した各国の平均賃金の調査だった。

それによると日本の年間の平均賃金は424万円(1ドル110円で換算)。35カ国中22位であるが、何より注目されたのはお隣の韓国が462万円と日本を上回っていたことだ。しかも2015年を境に5年連続で追い抜かれていた。

GDPで中国に抜かれたとはいえ、いまだに世界第3位の経済規模を誇る日本だが、平均年収ではOECD諸国の平均を下回り、2000年初頭までは100万円以上も引き離していた韓国に、逆に38万円もリードされている。

本当にそうなのか。実はOECDの平均賃金は物価水準を考慮した「購買力平価」をベースにしている。これは同じ品質・量の商品がアメリカで1ドル、日本で150円だったら、実際の為替レートではなく、1ドル150円のレートで換算して計算する。

代表的なものがその国でビッグマックがいくらで買えるかというビッグマック指数だ。つまりより生活実感に近い実質賃金ということになる。

ちなみに2021年のビッグマックの価格は韓国4ドルに対し、日本は3.55ドル。価格の違いが反映されて韓国の実質賃金が高くなる傾向がある。

一方、名目賃金だけの平均賃金を比較すると日本と韓国はそれほど変わらない。

また、平均賃金といっても非正規社員を含む労働者の平均であり、正社員との格差が大きい非正規社員が4割近くを占めるため、日本の平均賃金を低く抑えているという説明もなされる。

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