仕事相手との初対面のとき、信頼を獲得するにはどんな言葉が有効なのか。ジャーナリストの田原総一朗さんは「コンサルタントの仕事は会社の問題点を鋭く指摘することだが、仕事のできるコンサルは必ず相手の会社を褒めることからはじめるという。これには見習うべき点がある」という――。

※本稿は、田原総一朗『コミュニケーションは正直が9割』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

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田中角栄は褒め上手、官僚のプライドをくすぐり味方につけた

意外かもしれませんが、政治家には人を褒めるのが上手な人が多いです。田中角栄なんてその最たるものでしょう。官僚を上手に持ち上げて、彼らのプライドをくすぐって味方につけてしまいました。

2000年に野党が森喜朗内閣の不信任決議案を提出する際、自民党の加藤紘一さんが欠席し「加藤の乱」を起こしました。

その際、私が司会を務めていた『サンデープロジェクト』という番組に加藤さんを呼び、当時自民党幹事長だった野中広務さんに出張先から生中継で出てもらいました。

二人は番組内で腹蔵なく話し合いました。最後に加藤さんは、感極まって涙を流したところも映し出されました。

結局、野中さんは乱を許さず、加藤派の切り崩しに成功して加藤さんは政治生命を絶たれてしまうことになったのです。

田原総一朗『コミュニケーションは正直が9割』(クロスメディア・パブリッシング)
田原総一朗『コミュニケーションは正直が9割』(クロスメディア・パブリッシング)

その様子を見た当時の石原慎太郎さんから電話がかかって来て、「田原さん、サンプロという番組は日本一危険な番組だよ」と言いました。私は石原さん流の誉め言葉だと思って聞きました。

同じように、その後、麻生太郎さんが番組に出たときも、「いままでたくさんの政治家が痛い目に遭っているから、僕は余計なことは言わないよ」と笑って言いました。これもまた麻生さんらしい誉め言葉だと思います。

たんに褒めるのではなく、ちょっとひねった形で褒めるというのが彼らのスタイルです。ただ、これはいきなり誰でもできるというものではありません。素直に褒めるのが無難でしょう。