※本稿は、ひきたよしあき『人を追いつめる話し方 心をラクにする話し方』(日経BP)の一部を再編集したものです。
謝罪・依頼・感謝を「すいません」で済ましていいのか
例えば、こんな新人くんがいます。とてもいい子なんだけれど、口数が少なく、少し注意すると「すいません」と小さくなる。話しかけてくるときも「すいません」から始まる。謝るときも「すいません」と頭を下げる。ある日、彼が両手でパソコンやら資料やらを抱えていたので、エレベーターのボタンを押してあげたら、感謝なのだろうか、「すいません」とまた頭を下げた。「ねえ、『すいません』を便利に使い過ぎてない?」。あなたもこんな気持ちになったことはありませんか?
始めに、新人くんが使っている「すいません」は間違いです。漢字で書けば「済みません」。相手に対して「私の気が済みません」という意味。だから「すみません」が正解です。言いやすいので、つい「すいません」と発音してしまいますが、直しましょう。書く「すみません」を減らして、言葉を選択できる人になるときは特に、「すいません」と書かないように。
さて、その「すみません」、新人くんならずとも、実によく使う言葉です。彼の例で見ると、
・注意されたときの「すみません」 謝罪
・呼びかけてくるときの「すみません」 依頼
・「ありがとう」の意味での「すみません」 感謝
の意味で使っています。「謝るとき」「呼びかけるとき」「感謝するとき」というコミュニケーションのなかでも大切なポイントを、「すみません」で済ましているのですから、人との距離が縮まりません。どうすればいいのでしょう。
目上の人や得意先への謝罪はより丁寧な言葉で
ビジネスでの謝罪は、「申し訳ございません」「失礼いたしました」が、正しいとされています。目上の人、得意先などの場合は、努めて使うようにしましょう。
「ごめんなさい」も謝罪にはよく使います。しかし、この言葉は、「許してください」と相手に許しを請うのが本来の意味です。「ごめんなさい」よりも「すみません」と言ったほうが、甘えることなく謝罪していることになります。
もっとも、これらはかしこまったビジネスの場での話で、普段の仕事では臨機応変に使い分けてください。