感謝の「すみません」は使わないほうがいい

呼びかけの「すみません」は、ほぼ相手の気を引くための「掛け声」と考えたほうがいいでしょう。使っても差し支えありません。が、相手にスマートな印象を残すなら、「すみません。少しお時間いただけますか」。あるいはもっと丁寧に、「すみません。5分ほどお時間いいですか」と、相手の時間をもらうことに気を使うようにしたいものです。

以前、「忙しい政治家と話すときは、6分を単位にしろ」と言われたことがあります。

「挨拶」に1分。中身は5分。この時間で話ができるところまで内容をそぎ落としてこい、というわけです。これは政治家だけでなく、多忙な企業トップと話すときにも役に立ちました。時間を明示することも大切なのです。

最後は、感謝の「すみません」です。これは使わないほうがいいでしょう。この「すみません」には、「こんなことまでしてもらって、私の気が済みません。恐縮です」と、謙遜の気持ちが入っています。しかし、感謝するときは「ありがとうございます」と言うほうが、気持ちが伝わります。

「すみません」は、謝罪と依頼のときに使う。感謝は「ありがとう」と言う。「すみません」を使い分ければ、新人くんだって感情表現の豊かな人になれますよ。

「なるほど」は上から目線の大名言葉

私はインターネット教育番組「Sch00(スクー)」で講師をしており、書き方、話し方などについてさまざまな角度からお話ししています。そのなかで、「なるほど」という言葉について説明しました。

「なるほど」は、「成る」と「程」」を合わせたもので、「できる限り成っていること」から、成果を評価する言葉に変化してきました。「確かにあなたの言うことは、できる限りのところまで達成しているね。評価してあげるよ」と、こんな意味です。評価するのですから、本来、目上の人が使う言葉。上から目線の「大名言葉」です。

こう説明した後、私は番組内で、何度も「なるほど!」と使っていました。気になって過去の放送を聞き直したら、「はい」「うん」「なるほど」が、私の受け答えのパターンです。「なるほど、なるほど!」とおどけてみたり、「なるほどですね!」と若ぶってみたりと、「なるほど」を連発している自分に気づきました。ショックでした。

「なるほど」が、「上から目線」の言葉だという認識はありませんでした。思えば、若い頃に『なるほど!ザ・ワールド』という番組をよく見ていたし、『世界なるほど新発見』などというドキュメンタリーも見ていた。「なるほど」は、学びと発見に満ちあふれたポジティブな言葉だと思い込んでいたのです。