職場では正論や正しい意見だからといって受け入れられるとは限らない。そんなとき、「反対意見」を通すにはどうすればいいのか。元駿台予備学校講師の犬塚壮志さんは「『しかし』や『だけど』のように逆接ではなく、『その上で』や『だからこそ』のように、順接で表現することが重要になる」という――。(第3回)

※本稿は、犬塚壮志『説明組み立て図鑑』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

ディスカッションをする女性グループ
写真=iStock.com/recep-bg
※写真はイメージです

相手にとって耳の痛い話をどう伝えればいいか

「正しいことを伝えているのに、なんで聞き入れてくれないんだ……」
「自分と違う考え方をしている人と話すと、いつもぶつかってしまう……」

勘違いや思い込みにより明らかに相手が間違っている場合に、正論や正しい意見を伝えてもなかなか聞き入れてくれないといった経験はないでしょうか? 場合によっては、ぶつかってしまうなんてことも……。

経験豊富なベテラン社員であっても、その分、思い込みも持ちやすかったりするでしょう。狭い業界、閉ざされた世界の中でしか生活していないとしたら、触れる情報が限定的になってしまいます。その結果、事実の正しい解釈ができなくなってしまう可能性もあります。

そういった人たちの考え方や認識に対して、そこを正したり修正したりする意見、すなわち反対意見を伝えるのは骨が折れることでしょう。相手にとって耳の痛い話を伝えるのであればなおさらです。

コミュニケーションに関わる研究をしている私自身も、反対意見を伝える上で過去に数多くの失敗をしてきました。

反対意見を伝えて契約解除になった過去

予備校講師として登壇していた頃、質問や相談に来た生徒になんの工夫もせず、反対意見だけを伝えていました。

講師という立場上、生徒とぶつかることはほとんどなかったのですが、生徒の考えや意見を真っ向から否定したところ、表情から明らかにモチベーションが下がっていくのがわかりました。

中には反対意見をそのまま伝えたせいで、涙を流してしまう生徒もいました。立場も含め、正しいことをそのままに伝えることは、相手の心にダメージを与えてしまうのだと猛省しました。