ビジネスの世界では「結論から話す」が重要だといわれる。それは本当なのだろうか。元駿台予備学校講師の犬塚壮志さんは「結論から話して上手くいくこともあるが、失敗することもある。それは『共通の基盤』と呼ばれるファクターが欠けているからだ」という――。(第4回)

※本稿は、犬塚壮志『説明組み立て図鑑』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

ミーティングをしているビジネスマン
写真=iStock.com/Yagi-Studio
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「結論ファースト」一辺倒では上手くいかない

自分「(心の声:上手く話すには“結論”からだったな!)結論としては、●●です」
相手「……それ、何の話?」

せっかく結論から話したにも関わらず、相手に上手く伝わらなかった経験はないでしょうか?

ビジネスの世界では「結論から話せ」はよく聞くフレーズでしょう。私自身もさまざまな書籍でそれを目にしていたので、社会人になってから数年間は深く考えることなく結論から話すようにしていました。

しかし、結論から話して上手くいくときといかないときが度々あったのも事実です。

例えば、入社5年目に、新規企画を上司に提案しようと、「●●をやらせてください」と結論から伝えた際に、「そもそも、それ、何の話だっけ?」「いつ、そんな話になったんだっけ?」と返されました。

相手の知りたい結論から話す重要性はある程度理解はしていたものの、「結論から話す」が常に正しいとは言えないのではないかという疑問が、年を重ねるごとに強くなっていきました。

そこで、「結論ファースト」一辺倒では上手くいかない理由を、ヒトが物事を理解するメカニズムに関する専門書や学術論文を読み漁り、徹底的に調べ上げました。そして、相手にわかりやすく伝えるためには必要不可欠な、「ある1つ」のファクターを見つけました。

わかりやすく伝えるために必要不可欠な「たった1つ」のこと

その「ある1つ」のファクターとは、専門的に「共通の基盤」と呼ばれるものです。

そもそも、自分が話したり書いたりしたことがすべて正確に相手に伝わることは稀です。なぜなら、自分と相手が持っている知識や特定の分野に対する理解度がまったく同じであることはあり得ないからです。そして、自分が言葉にしていない部分を相手は頭の中でそれとなく補っています。