わかりやすく伝えるにはどうすればいいのか。元駿台予備学校講師の犬塚壮志さんは「たとえ話を混ぜるとわかりやすくなる。ただし、たとえで用いるものは、老若男女だれでも理解できるものにしないと逆効果になる」という――。(第2回)

※本稿は、犬塚壮志『説明組み立て図鑑』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

会議をするビジネスマン
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ヘタな喩え話ほど逆効果になる

相手「たとえるとさ、このお客さんの案件って、ラフレシアだね」
自分「??」

相手が「喩えると、……」と言ったあとの話の内容がまったく理解できなかったという経験はないでしょうか?

あるいは、自分の場合に置き換えてみると、どうにか相手に理解してもらおうと喩え話を入れたにも関わらず手応えがまるでなかったり、相手が沈黙してしまったりしたことはないでしょうか?

このような「喩え」によるコミュニケーションミスに出くわしたことは誰しも一度や二度あるはずです。

私は長年、予備校で受験生を相手に「化学」という科目を教えてきました。化学という科目は、目に見えない小さなレベルで物質を扱うため、説明に工夫が必要でした。

とっつきにくく、わかりづらい内容を比喩などを用いて噛み砕きながら伝えることが予備校講師にとって非常に重要な仕事でした。

現在は、企業向けの研修講師として登壇し、「喩え」なども含めた説明スキルを中心に講義を行なっています。

しかし、そんな私も予備校講師として駆け出しの頃は、安易に「喩え」を多用したばかりに悲惨な目に遭いました。

「上手いこと言おうとしなくていい」生徒からの厳しいコメント

それこそ講義後の受講アンケートに、「喩えが意味不明」、「喩え話のせいで逆に混乱した」、「上手いこと言おうとしなくていいから、ちゃんと説明してほしい」といった厳しいコメントをいくつももらいました。

自分としては喩えを入れて上手く説明できたと思っていたのですが、実はそれがまったく生徒に伝わっておらず、むしろ逆効果になっていたのです。