わかりやすく伝えるための話の組み立てステップ

そのステップというのは、以下の4つの手順で伝える内容を組み立てていきます。

Step1 正確な定義や情報を伝える
Step2 相手が知っているであろうフィールドを示す
Step3 そのフィールドで似た特徴を持つものに喩える
Step4 正確な定義や情報を、簡潔にもう一度繰り返す

1つずつ説明していきます。

Step1では、まず、「喩え」を入れないオリジナルの情報を正確に伝えます。ここは、正確さを優先すべく、多少、堅いフレーズで説明しても問題ありません。

Step2では、どのようなフィールドで喩えるのかを示します。「これによく似た構造が、身の回りの人間関係にも潜んでいます」のようなフレーズを使います。なお、このステップは単独のフレーズで用いずに、「これを、花で喩えると、……」のように、Step3のフレーズとセットにして用いてもOKです。

Step3では、実際に喩えた内容を伝えます。繰り返しになりますが、わかりやすい喩えを見つけるコツは、わかってもらいたいことから特徴を抽出して、その特徴と似たような特徴を持つものを探すことです。

Step4では、Step1で伝えた内容をコンパクトにして、もう一度繰り返します。説明を喩え話で終わりにしないということです。

実は、過去に予備校で講義をしてきた中で、会心の喩え話を伝えただけで満足してしまい、このステップを行わないときがありました。

そんなとき、生徒にそのときの講義で覚えていることは何かと尋ねたら、「ジャイアンとのび太がいました」と、ものの見事、喩えた部分しか覚えていなかったのです。

授業中の学生
写真=iStock.com/Chinnapong
※写真はイメージです

それ以降、喩え話がウケたことで盛り上がった相手のボルテージを下げることになったとしても、必ず最後に「喩え」を用いないオリジナルの情報を正確に伝えるようになりました。

「ドラゴンボール」より「ドラえもん」がいい

例えば、職場における「エンゲージメント」という用語をこの組み立てのステップを踏んで作った喩えの事例が、次のようになります。

Step1 「エンゲージメントとは、簡単に言うと、個人と組織の双方の関係性や思いのことです」
Step2 「身近なもので喩えてみますね」
Step3 「エンゲージメントとは、磁石のN極とS極のように互いに引きつけ合う性質のものです」
Step4 「つまり、一方向的なものではなく、個人と組織が互いに貢献したいと思う双方向の関係性のことです」