一流の経営者ほど聞く力が優れている
ソニーの創業者の一人である盛田昭夫さんも、じつに話を聞くのがうまかった。飛行機や新幹線などで乗り合わせると、わざわざ私の隣の席の人に「席を譲ってもらえませんか」と交渉するんですね。
それで私の横に座ると、「いまの政治はどうなのか?」「どんな人物がキーパーソンか?」「その人物の魅力は?」などと矢継ぎ早に質問してきます。もはや私が取材を受けている感じでした。
政治家にしても経営者にしても、成功している一流の人たちほど人の話をよく聞きます。
相手の話をよく聞くことで情報を得るわけです。それだけでなく、「この人は真剣に自分の話を聞いてくれる」という、相手からの信頼を得ることができるのです。
コミュニケーション力を高めるならば、まず相手の話をよく聞くことから始めることでしょう。その際には、相手の話に対して相槌をしっかり打つことが大事です。そして場合に応じてしっかりとメモを取ります。
さらに相手に話を促す場合には、「つまり○○○ということですか?」「それは○○ということでしょうか?」などと、話を自分なりに解釈して再び相手に投げかけると効果的です。
すると、相手は「自分の話をよく聞いて、しっかり考えてくれているな」と感じ、さらに話したくなるのです。
隠しきれない本心が体の動きとして表れる
新型コロナの影響で、人が直接顔を合わせることが難しくなりました。そこで一気に広がったのが、リモートでのコミュニケーションです。Zoomなどでリモート会議やリモートワークが一般的になりました。
離れた者同士が複数で同時にコミュニケーションできるというのは、確かに便利でしょう。しかも、相手の顔を見ながら会話ができるわけです。
ただし、やはりコミュニケーションの基本はフェイスtoフェイスです。たとえZoomであっても、生身の人間と直面しての会話とは、情報量が格段に違います。
相手と自分が空間を共有しているというリアリティは、コミュニケーションの非常に大きな部分を占めています。
たとえばZoomだと、表情はよくわかるけれど、体全体は見えません。リモート会議でも、上半身はスーツを着ていますが、下は寝巻のまま参加している人もいるとか。
会話は言葉や表情だけでなく、相手の雰囲気やボディランゲージも重要な情報です。顔では余裕のある表情をしているけれど、やたら貧乏ゆすりをしているとか、しきりにハンカチで手のひらの汗をぬぐっているとか。
心の動きが体の動きとなって表れます。隠し切れない本心が、底から垣間見えたりします。コミュニケーションとはそこまで含めてのものです。だからどんなにリモートツールが誕生しても、フェイスtoフェイスが基本であることは変わりません。