腕力に勝る男性が非力な女性に精神的にも経済的にも支配され“洗脳”されたような状態になる逆DVの事例は少なくない。現在40歳の男性は20代で出会った女性と交際・結婚したが、それは地獄の始まりだった。娘2人を抱え、追い詰められた男性は弁護士に相談。一刻も早く妻から逃げ、離婚しようとしたのだが――。
【前編のあらすじ】橋本幸男さん(40代・独身)は、フリーターをしていた25歳の頃、アルバイト仲間と合コンに参加。そこで、オシャレで笑顔が印象的な、後に妻となる女性(当時20歳)と出会う。交際・同棲を経て、結婚。だが、妻は橋本さんの給料を管理し、友人との交際を禁じ行動範囲を制限。また家庭では無視したり罵詈雑言を浴びせたりした。橋本さんは強い違和感を覚えながらも「いつか伝わる」「いつかわかってくれる」と信じたが、DVはエスカレートする一方……。
退職と起業
妻(当時22歳)の出産とほぼ同時に決まった橋本幸男さん(当時27歳)の勤め先は、実はブラック企業だった。橋本さんの2カ月前に入社していた同年代の男性が、上司や社長からのいびりに耐えかねて辞職すると、橋本さんがターゲットに。
会社ではパワハラ、自宅では妻からのDVに悩む日々が始まる。それでも橋本さんは、子どもたちの笑顔に癒やされて、「明日も頑張るぞ!」と自分を奮い立たせた。
しかし、次々に起こる理不尽な事件や問題に、橋本さんはついに辞職を決意。おそるおそる妻に相談すると、「辞めるなら、今より稼げて早く帰ってこれるところを探せよ!」と言う。橋本さんは、「それなら話が早い!」と思った。こんなことがあったときのために、少しずつ起業をするための勉強を進めていたのだ。
2008年9月。ブラック企業を辞職し、起業をすると、すぐに妻から課された収入ノルマを達成する。
だが、よいことばかりではなかった。起業前から懸念していたことだが、自宅の一室で仕事をする橋本さんは、ほぼ1日中、家の中で夫を束縛し、財布を握る専業主婦の妻と過ごすことになる。
朝、保育園に娘たち(当時3歳・1歳)を送り届けた後、仕事を開始するが、仕事にノッているときに限って妻が声をかけてくる。用件は、「洗濯・食器洗い・トイレ掃除・買い出しの運転手をしろ!」というものだった。
ある日、橋本さんは勇気を出して言った。
「ごめんね。納期が迫っていて、このままだと間に合わないから、集中させてほしいんだけど」
すると妻は言った。
「はあ? 誰のおかげでのんびり仕事できると思ってんの? 全部やれや!」
結局橋本さんは、睡眠時間を削って納期に間に合わせるしかなかった。