現在40代の独身女性には2歳上の姉と2歳下の妹がいる。小さい頃、両親は我の強い姉や妹の言動を大目に見たが、中間子の女性にだけは厳しく、家事の手伝いも強要。姉は女性にだけ執拗に嫌がらせをした。堪忍袋の緒が切れた女性は中2の冬、包丁を片手に寝静まった姉の部屋へ入っていった――。
ついてない朝のスタート:コーヒーの入ったタンブラーを床に落とした
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この連載では、「シングル介護」の事例を紹介していく。「シングル介護」とは、主に未婚者や、配偶者と離婚や死別した人などが、兄弟姉妹がいるいないにかかわらず、介護を1人で担っているケースを指す。その当事者をめぐる状況は過酷だ。「一線を越えそうになる」という声もたびたび耳にしてきた。なぜそんな危機的状況が生まれるのか。私の取材事例を通じて、社会に警鐘を鳴らしていきたい。

常に不機嫌な姉と溺愛される妹に挟まれた中間子

関西在住の門脇玲子さん(仮名・40代・独身)は、トラックの運転手の父親と、専業主婦の母親のもとに産まれた。2歳上に姉がいたが、門脇さんが産まれた2年後に妹が産まれると、両親は2人とも妹を溺愛。亭主関白な父親は子育てを母親に丸投げした。

門脇さんは両親に遊んでもらった記憶がなく、おもちゃを買い与えられたこともないため、しょっちゅう庭にいるアリと遊んでいた。おもちゃを使った遊びやお絵かきをして遊んだことがなかった門脇さんは、4歳になって幼稚園に入ると、何をしたらよいか困ったという。

学校に上がると、母親はなぜか門脇さんだけに掃除や食事の支度の手伝いを強要。さらに、身体が大きく、食欲旺盛な年上の姉と同じだけご飯を食べさせられた。少食だった門脇さんは全部食べるまでに時間がかかり、母親に怒鳴られるので無理やり食べていると、毎回吐いてしまう。トイレで吐いていると母親に、「トイレに食べ物を捨てるな!」とまた怒られ、父親はわれ関せずだった。

2歳上の姉は常に不機嫌で、話の中心に自分がいないと泣き叫び、怒り散らした。門脇さんは中学生になると友だちが増え、家にいる時間が減ったが、家にいる間は姉がトイレや入浴時までつきまとい、執拗しつよう罵詈ばり雑言を浴びせるようになる。

姉は外面はよかったが、友だちができず、門脇さんが友だちと遊びに行こうとすると、玄関で首をしめられたり、枕で窒息させられそうになったりして、出かけるのを妨害された。

それでも両親や妹は傍観するだけ。初めは反抗していた門脇さんだが、ある日両親から、「姉を敬いなさい!」と言われ、それ以降、反抗ことを我慢するようにしていたら、姉の暴言や暴力はエスカレートした。

姉は、妹とケンカをすることもあったが、妹は弁が立つだけでなく、つかみ合いのケンカになっても姉に負けず、両親も「姉を敬え」とは言わない。そのせいか姉は、妹には当たらなくなっていった。