姉への憎しみと怒り

当時のことを振り返ってもらうと、門脇さんの口から耳をを疑うような言葉があふれ出た。

「私が家にいると姉は、私の背後にピタリとくっついてきて、母がパートで家にいないと、『洗い物しろ!』『風呂掃除しろ!』など何かにつけて命令し、皿洗いをすれば大声で『洗い方がなってない!』『ポットのお湯が満杯じゃない!』『次は掃除機かけろ!』と」

「本を読んでいれば、『アホが読んでも仕方ない!』『そんなしょうもない本読むな!』などと怒鳴ります。友だちから電話がかかって来ると、『電話使うからと早く切れ!』と叫んで電話をさせてもらえませんでした」

「学校のテストでは私は常に90点以上、姉は赤点ばかりなのに、私が勉強をしていると『アホが勉強してる』と笑いながら言ってきたり、『あんな友だちと付き合ってるから、テストの点数が悪いんや! カスみたいなヤツとは付き合うな!』とののしったり。お風呂に入っていたら姉が入ってきて、当時痩せていた私に、『骨だらけで気持ち悪い! さっさと上がれ‼』と言って無理やり風呂から出される……などということが、毎日のように続きました」

たまりかねた門脇さんは、両親に何度も「姉をどうにかしてほしい」と懇願。だが、やはり「我慢しろ」と言われるだけで、門脇さんが姉に暴言を吐かれていても、終始傍観。

姉への憎しみと怒りが我慢の限界に達したのは、門脇さんが中学2年生の冬のことだった。包丁を手に、寝静まった姉の部屋に入り、枕元に座って姉の胸のあたりに包丁を高く掲げ、刺そうとした。

ベッドですやすや眠る少女
写真=iStock.com/Diane Labombarbe
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門脇さんは、包丁を掲げてどれくらいの時間が経ったかは憶えていないというが、「私が殺したら、外面がいい姉が被害者で、私が悪者になる」という思いが殺意をとどめた。結局、門脇さんは、眠っている姉に気づかれないまま、部屋を後にしたという。

その後はいつしか、姉へ怒りが募ると、自分の腹部を切り裂く想像をして抑えるようになっていた。