家庭にのこり続けるタブー

筆者はこの取材をおこなうまで、「多くの女性は、男性に腕力でかなわない。なのに、妻が夫にするDVが成立するのはなぜだろう」と思っていた。

しかし、橋本さんに取材をして腑に落ちた。DV加害者の多くは、出会ってからしばらくは本性を隠し、被害者から確固たる信頼や愛情を得た上で、社会的DVで社会的に孤立させ、経済的DVで戦意喪失や支配強化を狙い、精神的DVでさらに支配や恐怖を強めていく。そのため男性でも、「反撃したり、抵抗したりすれば、さらにひどい目に遭わされる」という恐怖におののき、暴力に耐えてしまう人が少なくないのだ。

内閣府の調査によると、配偶者からの暴力に関する相談件数は、2016〜2017年に減少したが、その後は増加傾向にあり、2019年の相談件数は約12万件だった。

そのうち、男性からの相談は約3000件ほどだが、女性に比べて被害を訴え出ることに抵抗を感じ、相談できない男性は相当数いることが想像される。

2011年3月、2回目の離婚裁判が終わり、橋本さん夫婦は正式に離婚が確定。橋本さんは、家も車も貯金も子どもの親権もすべて妻に渡し、娘たちに養育費を支払う条件で離婚。妻の性格から考えて、「娘たちにはもう二度と会えない」ことを覚悟したが、離婚から約半年後には、娘たちとの再会を果たす。なんと、妻から「子どもたちと会ってあげてほしい」と言われたのだった。

「幸い娘たちは、『お母さんがいじめるから、お父さんが出て行っちゃったんだよ』と言っていて、寂しい思いをさせてしまいましたが、私のことは少しも恨んでいない様子で安心しました」

現在娘たちは17歳と15歳。橋本さんの仕事は順調で、“平凡な一日”のありがたみを噛み締めているという。

橋本さんが離婚にかかった弁護士費用は約20万円。当時一文無しだった橋本さんは、矢作弁護士に頼んで分割払いにしてもらった。

渡辺弁護士によると、弁護士費用については、調停か裁判か、財産や慰謝料、親権を争っているのかなどによって、かなり変わってくるとのこと。基本的に自己負担で、加害者に弁護士費用を請求することはできない。しかし、橋本さんのように分割払いが可能な場合や、法的トラブル解決のための総合案内所的な役割を担う「法テラス(日本司法支援センター)」を利用する方法もある。法テラスや弁護士事務所では、無料の法律相談を実施している場合も多いので、まずは連絡してみてほしい。

インターネットの普及により、かなりのタブーは破られてきた。しかしまだ、腫れ物のように扱われ、見て見ぬ振りをされ続けるタブーは確実に存在する。

家庭のように、限られた人間しか出入りできない閉ざされた空間にこそ、タブーは遺り続けるのだ。

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